「データの活用がなかなか上手くいかない」という問題の1つに「人材がいない」ということが言われています。

しかし、競合企業や様々な企業がデータ活用で成果を出していく中で「人がいないから」といってデータ利活用をあきらめてしまうことは非常にもったいないことですし、大きなチャンスを逃してしまうことにもなってしまいます。

そこで、今回はデータ利活用を進めるためには、最低でもどんな人材がいればよいのか、というのを考えてみます。

データサイエンスに必要な要素とは

データから価値を生み出すためには、データマネジメントをきちんと行うことも重要ですが、なによりデータを分析して得られた結果がビジネス上の価値を生むことで初めて「データが活用できた」ということになります。

データを分析する上では「データサイエンス」の力を活用していくことになります。

データサイエンスには、以下の3つの要素が必要と言われています。

・ビジネス(ビジネス課題の設定や解決力)
・エンジニアリング(データハンドリングやプログラミング)
・サイエンス(数学、統計学、情報科学)

参照 一般社団法人データサイエンティスト協会

しかし、これだけの素養をすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材は、そうそうお目にかかることはできません。

仮にこうした人材がいたとしても、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字)と呼ばれるような巨大IT企業や、大手コンサルティングファームなどと、同レベルの待遇・給与で迎えることは難しいでしょう。

また、ひとりにデータ活用・分析を任せすぎてしまうと、その人材が働けない状況(休職・退職など)になったときに、業務が回らないといったことにもなりがちです。

予算があまり潤沢ではない場合や、データ利活用のイメージや費用対効果が見えづらいときは、以下に挙げるような人材を揃えてスモールスタートでやってみるのがよいと思います。

最低限必要な人材

データ利活用に最低限必要な人材として、 「データ推進マネジャー」と 「 データエンジニア 」をそれぞれ1名ずつ揃えてスモールスタートをしてみることをおすすめしています。

特に「データ推進マネジャー」というのはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、データ利活用の上ではある意味データサイエンティストよりも重要な役割を果たします。

以下でそれぞれの役割をご紹介した上で、なぜ最初から「データサイエンティスト」をチームに入れる必要がないのかも解説致します。

それぞれの人材の役割

上記で挙げた「データ推進マネジャー」と「データエンジニア」について解説致します。

データ推進マネジャー(データGM)

「データ推進マネジャー」、あるいは「データジェネラルマネジャー(GM)」など、呼び方は色々あって決まりはないのですが、このポジションの役割を一言で言うと、「データ活用のための道筋とゴールを具体的に描いていく人」という感じになります。

まずは、プロジェクトをまとめるこのポジションに、どんな人材を配置するかがデータ利活用のポイントになります。

このポジションがなぜ大切かというと、データ利活用は「企業のビジョンや目標、ビジネス上の課題に沿った形でアウトプットを出していく」ということが大前提だからです。

よって、このポジションの人材に求められるのは上記の「データサイエンスの3要素」で言えば「ビジネス力」ということになります。

「ビジネス力」がデータ利活用に大切な理由は、「 データはビジネスのフロー」によって発生するからです。

したがって、現場でデータ活用を推進していく人材は、自社のビジネスモデルや業務フローをよく理解し、どこでどんなデータが発生するのか、社内の誰がどんなデータを作っているのか、使っているのか、ということを把握している人物が適任です。

このポジションの人材は 「データ分析」そのものに詳しい必要はないですが、 どんな課題に対してどんなデータを活用すれば解決ができそうなのか、といったことがすんなりイメージできるような頭の良さが必要です。

このポジションに配置する人材の良し悪しによって、データ利活用の進め方やアウトプットは大きく異なってくると言ってよいでしょう。

このポジションは、自社のビジネスとデータをつなぐ重要なポジションです。
可能な限り、外注をせず、自社の社員から素養があると思われる人材を配置することがベストです。

このポジションを外注してしまうと、自社の課題にそぐわないデータ活用が進んでしまったり、ノウハウが蓄積されずに人材が育たないといったことが顕著になります。
いきなりこうしたポジションをこなせる人材は、別の業務でも重要な役割を与えられていたりしてすぐに登用することが難しい場合もあるかもしれませんが、データ活用のためには避けて通れません。

データエンジニア

データエンジニアは、簡単に言えば「プログラミングやITスキル全般に強い人材 」ということになります。

イメージとしては、「システム運用設計、運用試験、開発、実装、運用」といった広範囲なIT技術分野の経験があることに加えて、ビッグデータ関連のデータストア技術(RDB・Hadoop、NoSQL、DWH等)を持っていることが望ましいです。

「データエンジニア」という名前は、
「エンジニア(システム設計・開発等)」+「データストア技術」という意味あいです。

したがって、ベースはあくまでも「エンジニアリング」ですので、こうした人材が自社内に全くいない、ということはないと思います。

小規模の企業であればこうしたデータストア関連の技術を使用せずに、MS Accessに記録されているデータやExcelに日々入力しているデータをそのまま加工したり分析したりすることは可能です。

しかし、ある程度の規模のビジネスを実施している企業になると、AccessやExcelにデータを入力していくのは処理能力に限界がありますので、データ利活用のための専門的なデータベースやデータウェアハウス、クラウドサービスといったものを利用する必要がでてきます。

データ利活用のためには、まず「データをどこかに溜める」ことから始まり、それを「分析できる形に加工する」というプロセスがどうしても必要になります。

そのために「データエンジニア」はデータを溜める「箱」を用意して、データを入れ、必要に応じて加工するといった業務を担います。

最初からデータサイエンティストは必要ない理由

上記で、データ利活用に最低限必要な人材として「データ推進マネジャー」と「データエンジニア」の存在を挙げました。

それぞれの役割は、
・データ推進マネジャー → データ利活用のためのゴールと道筋を描く
・データエンジニア → データを適切に管理、加工する

ということになります。

「じゃあ、分析はだれがやるのか?」

ということになりますが、簡単な分析であれば「上記の2名+社内の一般社員」で十分にまかなうことができます。

データ利活用の最初の段階で、データサイエンティストが実施するような複雑な統計解析や機械学習といった手法は必要ありません。

それよりも、まずはデータを使って「何が問題なのかを認識する」ことから始めることが重要です。

例えば、

・自社の上層部が「最近発売になった自社の〇〇という商品は市場に受け入れられている」
・「消費税の増税によって売上が大きく落ちている」

といったことが言われているときに、「本当にそうなのか?」ということをデータから読み取ることができなければ、打ち手を立案して実行することができません。

これらの問題を明らかにするためには、商圏シェアの分析や、時系列での顧客分析、商品分析といったことが必要になりますが、特別に大量なデータではなければExcelでも十分に分析ができますし、複雑な手法は必要ありません。

もちろん、データサイエンティストがいればこうした基本的な分析もスムーズに進む可能性が高くなりますが、いきなり毎月数百万のコストをかけて採用をしなくても、自前の人材でできることはたくさんあります。
自前の人材でできそうなことをやりつくしたら、データサイエンティストを採用したり人工知能の導入を検討したり、といったフェーズに入るとよいと思います。

まとめ

データ利活用を進めるためには、最低限、
・データ推進マネジャー(データGM)
・データエンジニア

の2名を揃えましょう。(データエンジニアは何名かいても良い)

データ利活用の初期段階で、統計解析や機械学習といった複雑な手法は必要ありません。
よって「データサイエンティスト」をいきなり採用する必要はありません。
(予算に余裕があれば検討してもよいと思います。)

データ利活用を進めるためには、上記の2名を中心として、社内の一般社員も巻き込んでアウトプットを出していきましょう。(「データ好き」な人材は必ずいるはずです。)