データ分析プロジェクトを推進するにあたって、何を検討すればよいのか?、ということは、意外と語られることが少なく、「とりあえずデータはあるから、なんか分析しようよ」という感じで進んでしまうことが多いのではないでしょうか。

しかし、きちんとステップを踏まないと、「データ分析プロジェクトの成果がパっとしなかった」といったことや、「社内の同意が得られず、頓挫した」といったことになってしまいます。

今回はデータ分析プロジェクトを円滑に進めるための「4ステップ」をご紹介致します。

①戦略/事業理解

まずは最初に着手するのが、「①戦略/事業理解」です。

自社がどのようなビジネスモデルで、どのように儲けを出しているのかといったことや、取引先などからデータをもらう、あるいは買うなどして他社の分析を行う際には、取引先が置かれている市場環境や収益状況、キーパーソンとなる人物の発言内容や今後の方向性といったことを確認することが必要になります。

データ分析プロジェクトにおいては、何のための施策なのか、何のためにソリューションを導入するのかということがあいまいなまま進んでしまうケースが見受けられますが、この段階でKGIあるいはKPIといったことを明確に定義して、

データ分析の施策がどのKPIに対してどのような影響をもたらすかということを準備していきます。

流通・小売・飲食といった業界などは、「本部と店舗」でそれぞれの役割やオペレーションといったことが存在していますので、「本部としてコントロールできるKPI」と「店舗としてコントロールできるKPI」といったように、まずは大きく分解してみると、それぞれのKPIを整理しやすくなります。

②課題整理/構造化

2つめのステップの「課題整理/構造化」では、市場データやアンケートデータ、財務データといった定量的な分析や、フレームワークを活用するなどして、統合的・網羅的にビジネスの取り組み状況を整理していきます。

ここでの「課題設定」を間違えてしまうと、次に行う分析戦略やソリューション(問題解決)といったフェーズが上手くいきませんので、非常に大切なポイントになります。

「課題設定」に関しては経営層であれば「どこへ向かうべきなのか」、管理層であれば「何をするべきなのか」、現場層であれば「何をどうやって実現・実行するのか」という視点で考えることが大切です。

「課題整理/構造化」においては、いくつかのビジネスフレームワークを活用できます。

例えば、
・ロジックツリー
・PEST分析
・ファイブフォース
・SWOT分析

といったものです。

これらの「ロジカルシンキング」的なフレームワークは、データ分析プロジェクトを進める上でも、課題や思考を整理したりするのに大きく役立ちます。

しかし、ロジカルシンキングは「今のやり方を改善する」ということには優れていますが、「そもそもの前提を変えてしまう」ということには向いていません。

改善を行うことが最優先であれば構いませんが、「変革」を行う、つまり「破壊的イノベーション」や「デジタルトランスフォーメーション」といったことを実現するためには、さらに工夫が必要になります。

そこで活用できるのが「ラテラルシンキング(水平思考)」と呼ばれる考え方を使うことです。

ここでは詳しくは述べませんが、ラテラルシンキングは3つの基本として、「前提を疑う」「見方を変える」「組み合わせる」ということが言われています。

データ分析やデータサイエンスといったことを重視して企業経営をしていくことは、今後ますます重要にはなってきますが、あまりにもデータを重視しすぎると、「データから明らかになることしか信じない、やらない」という企業体質になってしまいます。

そうなると、これまでと違ったアイデアやビジネスモデルというものが生まれなかったり、どの会社も同じようなビジネスや商品ばかりで、「より多くのデータを持っている企業の一人勝ち」ということにもなりかねません。

データ分析の結果がビジネスに活かせない、あるいはいまひとつ「パっと」しないということが多いのも、分析の手法や見せ方が良くないということ以外に、そもそもの課題設定やモノの見方に問題がある場合が多いと感じます。

「データ」はあくまでも「現実の一部を切り取ったもの」でしかありません。

「データ」が表している一部の部分から、「市場は実際どうなっているのか」「顧客はどんな人で何を求めているのか」ということを想像する力も、データ分析プロジェクトにおいては非常に大切なことです。

③分析戦略/施策立案

②の「課題整理/構造化」の後は、課題を生み出している問題を解決するために、データをどのように活用していけばよいのかという戦略・施策を立案していきます。

データ分析の戦略には「戦略レベル」と「実行レベル」という2つがあります。

データ戦略のレベルとフロー

「戦略レベル」では、全社的に行うデータ分析や意思決定を行うために必要にデータを整備し、運営していくための体制を整えます。

経営戦略、事業戦略といったことや解決したい課題を分析戦略に落とし込むため、経営層や管理層の参画が不可欠です。

「データ」に関わる用語の定義やマスタデータの有無や構造、セキュリティ対策や組織体制、ガバナンスといったことまで幅広く検討する必要があります。

また、以下の「実行レベル」でのデータ分析戦略が、きちんと運営されているかを評価し、「計画・定義」に対してフィードバックを実施するということも、おろそかにされがちですが見落とせないポイントです。

「データ分析プロジェクト」においては、いわゆる「アドホック」な分析(1回限りのスポット的な分析)になればなるほど、その分析に使用したデータや加工・分析方法、アウトプット、アウトカムは良かったのかどうなのか、ということを振り返ることが少ないと感じます。

現場としては次から次へと分析案件の依頼が来るため、振り返っている余裕がないというのが現状ですが、データ分析担当者以外の事業担当者や管理層も一緒になって、定期的に振り返りの機会を持つことによって、より精度の高い分析や効率の良い進め方、あるいはノウハウの横展開といったことが可能になります。

「実行レベル」においては、「データライフサイクル」と呼ばれる、「データ収集」⇒「データ整理・統合・蓄積」⇒ 「データ加工・分析・可視化」という流れをどのように運営していくかということを、「ヒト・モノ・カネ」といった視点から検討していきます。

「実行レベル」の各フェーズでの体制がスムーズ行かなければ、データ分析の結果がビジネスに対しての「業務改善」や「意思決定」あるいは「新規事業創出」といったことに活かせず、ただ「コスト」がかかるだけ、ということになってしまいます。

事業を担当する営業部門やマーケティング部門だけではなく、情報システム部門や法務部門といった部署など、様々な部署が関わることになるため、利害関係の調整や、それぞれのやるべき事・範囲を明確にする必要があります。

データ分析においてどこから手をつけたらよいか、ということに関しては、①のステップで決めた「KPI」、②のステップで洗い出した「課題整理/構造化」といったことに照らし合わせて、費用対効果を明確にして優先順位を決める「ペイオフマトリックス」を使って仕分けする、というやり方もあります。

データ分析の内容によっては実現までのハードルが高かったり、その割にはいまひとつ経営に対するインパクトがないというものもあります。

機械学習的な手法(例えば「ディープラーニング」)と古典的な統計解析の手法(例えば「重回帰分析」)の精度を比べたときに、「ディープラーニング」のほうが良かったとしても、人間が結果を解釈するときには「重回帰分析」のほうが分かりやすい、ということもあります。

まずは簡単な方法や手法で実現できることから手をつけるほうが、「現場ですぐに活用できる」可能性も高く、データの扱いに慣れていない社員の底上げもできます。

④ソリューション実装/運用

③の「分析戦略/施策立案」が策定できたら、それを実現するためにはどのような手法、技術、システムが必要か、といったことや担当できる人材を採用する、というフェーズになります。

上記の3つのフェーズまでは「何をやるべきか(What)」という視点であったのに対して、④では「どのように実現するか(How)」という視点になります。

検討することとしては、

・データ分析に必要なデータベースやクラウドといった分析基盤のシステム実装と運用

・データ分析を実施するにあたっての分析ツールや手法の選定

・分析の可視化やアウトプットのフォーマット作成

・データ分析チームの運用や人材採用・育成

といったことが挙げられます。

分析基盤や分析ツール、手法といったことに関しては選択肢がある程度限られてくるため、予算や扱いやすさといった点で評価、導入を検討していくことになりますが、どのようなアウトプットが求められるのか、といったことやチーム体制、必要な人材については企業や扱う事業によってかなり異なってくるため、正解がなく、非常に難しい部分になります。

ここでのポイントは、「事業担当者が分析担当者に分析を丸投げしない」ということと「分析担当者がしっかりとビジネスを理解する」ということが重要になります。

事業担当者と分析担当者の認識や情報共有、目指す方向の一致がしっかりとなされていれば、

「データ分析にあたって必要な情報収集(インプット)」

「分析結果(アウトプット)」

事業価値化(アウトカム)」

という流れがスムーズになります。

ここがおろそかになってしまうと事業担当者が分析担当者に対して「結局、この分析結果から何をすればいいの?」といったことになってしまったり、分析担当者が事業担当者に対して「何を明らかにすればよいのかよく分からない」ということになりかねません。

システムの日常運用やデータの更新といったように、人の意思があまり介在しないようなルーティンワーク的な業務であればコミュニケーションの不一致による問題というものは起こりにくいですが、データ分析は最終的には「ヒト・モノ・カネ」をいかに動かすか、ということに繋がってくるため、利害関係者やそれらの人々の意思がかなり影響してきます。
よって、コミュニケーションが重要であり、お互いの理想を求めすぎず、良い意味で「妥協」するということも時には必要です。

まとめ

「データ分析プロジェクト」の「導入」というステップでは、検討するべきものが4つあります。

まずは事業の儲け方を理解し、定量的なデータやフレームワークを活用して課題を整理・構造化し、打ち手を考え、最後はそれをいかに実現するかを検討する、という流れになります。

特に、「事業理解」や「課題設定」という部分を間違えてしまうと、その後にいくら高度な分析を実施したとしてもビジネスに対して価値のある成果を生み出すことができなくなります。

「今あるデータから何ができるか」ということを出発点にしてしまうと、「事業理解」や「課題設定」といった部分が見えなくなり、企業として本質的に何を目指すのか、解決したいのか、ということが検討できなくなります。

よって、「事業戦略」や「課題」に対してどのようなデータを使ってどのような分析結果が出せれば目的が達成できそうか、という視点が大切です。

また、データ分析には利害関係者の意向や意思、感情といったことが大きく左右されるため、経営層、管理層、現場層、分析担当者、といった、プロジェクトに関わる人たちの意思疎通や情報共有が非常に大切です。