ビジネスの成長に向けて、データを活用することが重要視されてきています。

そうした中で「データを活用できる人材」を採用したいと考えている経営者や担当者もいらっしゃるかと思います。

本記事では、データ活用人材の必要性や職種、求められる能力などを解説し、経営者や採用担当者の方々に役立つ情報を提供していきたいと思います。

最後まで読めば、企業のデータ活用度合いに応じて、どのように「データ活用人材」を組織内に配置すれば良いかの具体的なヒントが得られるでしょう。

この記事でわかること

データ活用人材の意味が理解できる
データ活用人材の職種・業務内容・向いている人の特徴が理解できる
企業のデータ活用度合いに適したデータ活用人材の役割が理解できる

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データ活用人材とは何か? 企業のデータ利活用に必須の人材

データ活用人材」とは、データを収集・加工・分析し、ビジネスの意思決定に活用するための技術的スキルや、問題解決能力・コミュニケーション能力などを持ち合わせた人材のことです。

実務においては、「データ収集・加工・データ集計・分析」等を行ったり、「データに基づいた戦略立案」を行ったりします。

また、顧客や社内のユーザーと直接コミュニケーションを行い、「課題のヒアリング」や、「ツールの導入・運用」なども行う役割もあります。

企業がデータ活用人材を採用することで、データによって戦略的な意思決定が可能になり、競合優位性を得られるでしょう。

日本の企業におけるデータ活用人材の動向

これから「データ活用人材」のニーズの高まりが予想されます。

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」というデータによると、「AI人材」の需要が2018年の4万4,000人から2030年に至るまで24万3,000人まで拡大すると言われています。

「データ活用人材」と「AI人材」は異なりますが、ここでは「AI人材もデータ活用人材の一種」として扱います。

しかし、需要が拡大する一方、2030年時点でAI人材は最大14.5万人不足する見込みです。

このように外部からの人材調達が困難になる背景から、データ活用人材を自社のリソースで補う内製化を検討する企業も増えていくでしょう。

内製化によって、アウトソーシングしていた部分のコスト削減や、業務を自社内で完結できるため、顧客や社内のニーズに対して迅速に対応できるなどのメリットがあります。

データ活用人材の具体的な役割・職種を紹介

ここからは、データ活用に関連する職種について紹介していきます。

採用する際にどういった職種の求人を出せば良いかの参考になりますのでチェックしていきましょう。

※「年収相場」については業界や企業規模等によってかなり幅があるため、あくまで目安として捉えてください。

データ活用の方向性や戦略を作っていく人材

データ活用の方向性や戦略を作っていく人材には、ビジネスの観点から「データ活用」を検討することが求められます。

職種概要業務内容年収相場向いている人の特徴
CDO(Chief Data Officer 最高データ責任者)デジタルおよびデータ利活用の方向性を定め、全社的に推進していく。企業の成長戦略に貢献する役割を担う経営幹部のポジション。データ戦略の策定/データガバナンスの確立/データ分析・AIの推進1,000万円以上デジタルおよびデータ領域に精通している/マネジメント・ガバナンス・コンプライアンスに詳しい/組織を統率する力がある
データストラテジストCDOが構想したデータ戦略をより具体化し、その実行プランを策定する。データ分析やAIを活用したビジネス戦略の策定/データプラットフォームの設計や構築500〜2,000万円ビジネス理解がある/データに関する幅広い知識/戦略を具体化するスキル
ビジネスアナリスト企業の業務プロセスや問題点を分析し、改善案を提案する。顧客ニーズの把握/ビジネスデータの分析/業務フロー改善案の策定500〜1,500万円ビジネスプロセスや業務フローに関する知識や経験がある/構造的に物事を捉えることができる

データ活用の社内環境を作っていく人材

ここでは、社内でデータを活用・分析する際に必要となる「環境整備」を担う人材について紹介していきます。

職種概要業務内容年収相場向いている人の特徴
データスチュワードデータフローの設計、データ品質の管理など、データマネジメント全般を担当する。データ利用フローの設計/データ品質の管理/データ使用ルールの策定/データガバナンス検討など600~1,000万円データマネジメントやガバナンスに関する知識や経験がある/法的知識やセキュリティに関する知識がある
データアーキテクトデータの設計や構築において、企業のデータマネジメント戦略の策定や実行を担当する。データモデルの設計/データ定義の作成/データ活用システム全般の設計・構築・運用400〜1,200万円データに関する専門知識がある/全体を最適化する設計力や構想力がある/最新技術に詳しい
データエンジニアデータ収集・加工・活用するためのデータ基盤を構築・運用する。データベースの設計や開発/データのクレンジング・可視化ツールとの連携/クラウドツール等を活用したデータ管理400〜1,300万円プログラミングやデータベース設計・開発のスキル・経験がある/障害対応などのリスクマネジメントスキル

データを分析しデータを価値に変える人材

加工されたデータを分析し、知見を活かして価値へと転換させる職種は以下です。

職種概要業務内容年収相場向いている人の特徴
データアナリストデータ収集・分析を行い、ビジネス上の課題特定やデータによる問題解決プランを提案する。データ分析要件の定義/ビジネス上の課題特定/データ収集・データクレンジング・データ分析/プレゼンテーション400〜1,100万円数学的思考力がある/分析力がある/統計やプログラミングの知識がある/ビジネス理解がある/プレゼン力がある/問題を突き詰めて考えることができる
データサイエンティスト統計学や機械学習といった理論を用いて、データから規則性や将来予測を実施する。AI開発や導入に携わる場合もある。統計的なデータ処理/アルゴリズムを用いたデータ分析(高度な予測・分類・規則性の発見など)/AI研究・開発・導入支援450〜1,300万円数学や統計学の知識がある/Python・R・SQL等のプログラミングスキルがある/好奇心があり失敗を恐れない/難しいことをわかりやすくかみ砕く能力


その他のデータ活用人材

前述した職種以外にも「データ活用」を担う職種があるので紹介していきます。

職種概要業務内容年収相場向いている人の特徴
BIエンジニアBIに関する技術的な開発や実装、運用、保守を担当する。BIツールの導入/ダッシュボード作成/データウェアハウスとの連携等300〜800万円データベースの設計・運用に関する知識や経験/データ加工スキルがある/データ可視化スキルがある/デザイン力がある
AIエンジニア機械学習などの人工知能技術を用いて、AIを搭載したシステムやアプリケーションの開発・構築を行う。アルゴリズムの設計/システム・アプリ等への実装/AIシステムの動作検証等350〜1,100万円機械学習等のアルゴリズムに詳しい/エンジニアリング全般のスキルがある
クラウドエンジニア大量のデータを処理するためのクラウド環境の設計・構築・運用・保守などを担当する。クラウドプラットフォームを用いたサービスの設計・構築・運用・保守/ネットワークの設計・構築・運用・保守・セキュリティ対策の設計・実装・運用370〜990万円クラウドプラットフォームに対する深い知識や経験がある/ネットワークやセキュリティに関する知識がある

企業の「データ活用レベル」ごとに必要となる人材とは?

ここまで紹介した「データ活用人材」については、どの企業にもすべての人材が必要というわけではなく、その企業のデータ活用度合いや、どのような体制を取っているかによって変わってきます。

ここからは、企業のデータ活用度合いによって、どのような人材を採用・配置するべきかについて解説していきます。

レベル1 : データ活用にほとんど取り組めていない企業に必要な人材や役割

データ活用にほとんど取り組めていない企業に必要なことは、現状で用意できる手持ちのデータから何か示唆を得ることができないか検討することです。

データが社内でバラバラになっていたり、分析できる形として保持されていなかったりする場合は、いったん状況をある程度整理しましょう。

よって、以下のような作業を実施できる人材が必要になります。

データ活用レベル「1」に必要な人材

✔ データを分析できる形に整えることができる人
✔ どのような問題に対してデータ活用をするべきか検討できる人
✔ 基本的なデータ集計やグラフ化等の可視化が行える人

特定のスキルに特化した人材よりも、データ周りの業務を浅く・広くでもよいのである程度のクオリティで柔軟に対応できる人がよいでしょう。

ただし、「データ集計・分析」がほとんどできないとなると、データから課題解決につなげることが難しくなるため、「データアナリスト」的なスキルをメインに持ちつつ、データ活用の方向性の検討や、社内データの整理などを実施できる人材が必要になります。

こうした人材を採用することで、データ活用にほとんど取り組めていない企業でも、データを活用したビジネス改善や競争力強化の1歩を踏み出すことができるようになります。

レベル2 : データ活用にある程度取り組めている企業に必要な人材や役割

データ活用にある程度取り組めている企業には、データのマネジメントガバナンスが必要になってきます。

また、大量のデータや社内の多様なデータを一元的に管理・処理できる「データ活用基盤」の整備や、企業としての様々な課題に対する分析業務に、より注力していきましょう。

このフェーズになると、以下のような人材が必要になります。

データ活用レベル「2」に必要な人材

✔ 社内でのデータ使用のルール作りや、セキュリティ対策を実施できる人
✔ 社内のデータを一元的に統合できるシステムを構築・運用できる人
✔ BIツールなどを活用して、様々な視点からデータを集計・可視化できる人
✔ データを集計するだけではなく、データ同士の関係性やデータをもとにした顧客カテゴライズなどを実施できる人

そのために必要な人材は、データ基盤の構築や管理を担う「データエンジニア」や、Tableau等のBIツールを使ってデータをより分かりやすく可視化する「BIエンジニア」等が挙げられます。

各企業のデータ活用に対する方向性や考え方など、状況に合わせて適切な人材や役割を設定することが重要です。

レベル3 : データ活用で成果を出しており、体制や基盤などが一通り整っている企業に必要な人材や役割

データ活用で成果を出しており、体制や基盤などが一通り整っている企業は、更なるデータ活用を視野に入れた人材獲得が必要になるでしょう。

例えば、より高度なデータ活用をしていくためのAI関連人材や、データをもとに新規事業創出などが行える人材の採用です。

データ活用レベル「3」に必要な人材

✔ 全社的なデータ活用の方向性や、データ戦略を立案・実行できる人材
✔ 自社のデータだけではなく、他社やオープンデータの活用もできる人材
✔ 機械学習等のアルゴリズムを駆使して、データから深い示唆を導ける人材
✔ AIの開発・運用を担える人材

具体的には、高度なデータ分析を実施できる「データサイエンティスト」や、AI開発を担う「AIエンジニア」等です。

また、社内の各地でデータ活用が進み、データに関わる社員が増えてくると、会社としてのデータ活用の方向性がバラついてきたり、組織の統率が取れなくなってきます。

そのため、データ活用に関する戦略的な意思決定を担う「CDO(最高データ責任者)」や、「データストラテジスト」といった人材が必要になります。

これらの人材が揃うことで、より効果的にデータ活用が行えるようになるでしょう。

企業の「データ管理方法」による人材配置の考え方とは?

上記では、企業の「データ活用の度合い(レベル)」ごとに、どのようなデータ活用人材が必要かについてみていきました。

ここでは、「企業がどのようにデータを管理するか」によって必要となる人材について解説していきます。

本社でデータを一元管理しているような組織の場合

本社でデータを一元管理している組織の場合、データ整備やルールを策定するような人材を本社に集約することで、全社で統一されたデータ活用が可能になります。

例えば、「データスチュワード」「データアーキテクト」「データエンジニア」といった人材です。

逆に、支社や支店といったところには上記のような人材はそれほど必要ありません。

また、「データサイエンティスト」も本社でデータ活用案件を実施することがメインになるため不要と言えるでしょう。

支社に必要な人材は、ビジネス戦略やデータ活用の方向性やプランを策定する「データストラテジスト」や、データの収集・分析を行い、ビジネスの問題解決策を提案する「データアナリスト」のような人材です。

データを本社で管理していれば、支社ではある程度加工された状態のデータをすぐに分析できるため、支社ごとの営業やマーケティングの課題などを、営業担当者等と一緒になって分析できる人材が重宝されます。

各支社において個別にデータを保有・管理しているような組織の場合

各支社や支店等において個別にデータを保有・管理しているような組織の場合は、支社単位でデータ基盤の整備や、ガバナンス策定などが行える人材を配置することがポイントです。

メリットとして、各支社が自走することで、スピード感のあるデータ活用ができます。

しかし、各支社ごとにデータ活用を行うと優秀な人材が分散してしまったり、地方では人材がなかなか採用できないといったことも考えられます。

また、全社的なデータ統合横ぐしでの施策がとりづらくなるデメリットもあります。

そのため、「CDO(最高データ責任者)」が中心となって支社のデータ保有状況や活用状況を可視化し、モニタリングする必要があります。

データを活用するにあたっては、自社の社風やビジネスモデルなどを踏まえて、データを「本社で一元管理する」「各支社で管理する」あるいは「本社で管理するデータと支社で管理するデータを明確にする」といったようなルールや仕組みづくりが必要になります。

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おわりに ~自社に合わせた人材とデータ管理を~

最後までお読み頂きありがとうございます。

今回ご紹介した「データ活用人材」は、データを収集・加工・分析し、ビジネスの意思決定に活用するための技術的スキルや、問題解決能力・コミュニケーション能力などを持ち合わせた人材のことです。

企業の状況に即した「データ活用人材」を採用することで、ビジネス目標を達成するための戦略的な意思決定が可能になり、競合優位性を得られます。

まずは自社のデータ活用度合いがどれくらいなのか客観的に見直すことが重要です。

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