近年、「 データドリブン経営」という言葉が聞かれるようになりました。しかし、言葉が先走りすぎて、実際にはどのような経営を指すのか、なにをもってデータドリブン経営というのか、というのはあまり語られていません。

今回は、「データドリブン経営」に焦点を当て、データドリブン経営の全体像や実施する上で重要となるマネジメントについて解説していきます。

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データドリブン経営とは?

データドリブン経営とは、デジタル・トランスフォーメーション(DX)やそれらを支えるIoT、AIといった技術を活用し、ビジネスのあらゆる場面においてデータ主導で意思決定をする経営、のことを指します。

近年では、Google、Amazon、Facebook(Meta)、Appleといったいわゆる「GAFA」と呼ばれるようなテクノロジー企業が、古くから存在する名門企業や大企業のビジネスを根底から覆すような事態が起こっています。

そうした中で生き残るためには「データドリブン経営」が欠かせない、とされてきているのです。

特に、データドリブン経営によって恩恵を受けやすいのは、小売り消費財や、公共金融といった、B to Cの産業です。

これらの業界は多種多様なデータを集めやすいビジネスでもあり、他社に先行して、顧客にとって魅力的なビジネスを展開できると、そのサービスが顧客にとっては「当たり前」となりやすく、市場での利益を独占しやすくなる傾向があるためです。

企業経営という視点で見ると、データ分析やAIの活用によって大きな成果が出やすい領域は2つあります。

1つめは既存のビジネスプロセスを改善する領域、2つ目は、これまでには存在しない全く新しいビジネスを作りだす領域です。

データ活用で大きな成果が出やすい領域

既存のビジネスプロセスの改善
● これまでに存在しない新たなビジネスを作りだす領域

どちらにせよ、企業活動全体でのデジタル技術の導入や、新たな組織体制の構築は必須になりますし、1、2年ですぐに実現できるものではなく、5年、10年という先を見据えた戦略構築と実行が必要になってきます。

したがって、日本企業にありがちな「他社の様子を伺いながらやっていく」のではなく、「自社のビジョン」や「顧客に提供できる価値」を明確にして、変革を推進していく必要があるのです。

データ活用のポイント

自社がデータやデジタルを活用してどのような経営・事業をしていきたいのか明確にする
● 変革によって、どのような価値を世の中や顧客に提供できるのかを想像する

データドリブン経営推進のポイントとマネジメント

企業には多くの経営意思や経営課題が存在しています。

それらを「データドリブン経営」によって解決するためには、「全社的なレベルでのマネジメント」と、「施策レベルでのマネジメント」が求められます。

全社的なレベルでのデータドリブン経営のポイント

全社的なマネジメントを実施する上では、以下のようなことがポイントになります。

データドリブン経営の全社レベル推進のポイント

データが生み出す価値を最大化すべく、経営資源の配分を最適化する
● 個別のデータ施策から生まれた価値やノウハウを全社横断的に展開する

データドリブン経営が活性化するようにDX領域の取り組みを常に整備、高度化していく

デジタル時代の企業経営においては、「データドリブン経営を目指す」のではなく、企業経営自体が高度にデジタル化するわけですから、「データドリブン経営にならざるを得ない」とも言えます。

データドリブン経営においては、活用していくデータは自社のビジネスから発生するようなデータだけではなく、外部からデータを収集したり調達したりする必要も出てきます。

よって、「データをどう料理するか」という視点の「データサイエンス」だけではなく、「データをどのように管理するか」という「データマネジメント」の視点も非常に大切になります。

自社のビジネスプロセスで発生しているデータであれば、データマネジメントは比較的に実施しやすくなりますが、他社から調達したり購入したりするようなデータや、オープンデータなどを活用する場合は、法律的な問題や、データの抜け漏れといったデータ自体の信頼性が担保できない場合もあります。

データ活用を企業で推進していく場合、どうしても「データサイエンティスト」や「AIエンジニア」と呼ばれる高度なデータ処理技術を持つような人材と、機械学習や深層学習(ディープラーニング)などのAI関連技術ばかりに目が向きがちです。

しかし、本当にデータドリブン経営で組織に大きな価値をもたらすためには、組織内の経営層から現場までがデータが表す事実に基づいて意思決定をする必要があります。

どんなデータをどう活用すればどんな成果がもたらされるのか、といったことは専門職だけではなく、組織のすべての人材が考える必要があります。

そのためにも、

  • 明確なビジョンを立てる
  • ロードマップを描く
  • 最初に取り組むプロジェクトを成功させる
  • 従業員に投資し、全社拡大する

ということが求められます。

施策レベルでのデータドリブン経営のポイント

一方、「施策レベルでのマネジメント」を実施する上では、以下のようなことがポイントになります。

データドリブン経営の施策レベル推進のポイント

「数字遊び」にならないように、事業やビジネスの課題設定を明確にしてから取り組む
● 現場サイドに対して、うまく説明ができない分析結果の提案は避ける

データ分析の結果として、コスト増加に繋がりそうな施策の実行は避ける

企業の課題解決に対しては、必ずしもデータ活用やデータ分析をしなければいけないということはありません。

データ分析をしなくても分かりきっている問題や課題に対しては、単に予算がない、実行できる人材がいないといった要因で、取り組みが進まないこともあります。

したがって、なんでもかんでもデータを見れば良いという訳ではなく、まずはビジネス上の問題提起や課題設定を正確に実施することが必要になります。

これをせずにいきなりデータを見て、集計などを始めてしまうと、その結果がほとんど活かされないまま終わってしまうことも少なくありません。

また、企業の中でのデータ活用やデータ分析に対する期待値が高くなるほど、データを分析する側のアナリストやサイエンティストは、「すごい結果を出さなければいけない」というプレッシャーにもなり、分析している本人たちもなぜこのような分析をしたのか、なぜこのような分析結果になったのかがよく分からないというデータ分析をしてしまいがちです。

したがって、データ分析を技術者に依頼するビジネスサイドの人が、どのような成果を期待するのかを技術者に明確に伝える必要があります。

一方の技術者側も、ビジネスサイドがどのような課題を持っていてデータ活用をしたいのかどのようなアウトプットがでればビジネス改善に繋がるのか、といったイメージの共有をしていく努力が必要です。

データ分析の結果自体は正しく、ビジネスの改善に繋がりそうな提案が出せたとしても、その施策を実行するのに大きなコストがかかってしまったり、年単位での長期的なスパンで改善していかなければならないことに対しては、いったん避けるという取り組みも必要です。

データ活用は、データを収集するコストや、データをシステムに保存・保管するコスト、分析するシステムの使用量、人件費など、様々なコストがかかります。

リソースが潤沢な大企業であれば別ですが、予算の限られた中小企業などでは、少しずつでもコストを回収しながらデータ活用を進めなけば取り組みの継続が難しくなっていきます。

したがって、少しの売上アップやコスト削減でも良いので、ビジネス改善や業務改善にクイックに繋がりそうな打ち手から実行していくのが現場でのデータドリブンのコツです。

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おわりに ~データドリブン経営に取り組んで行くために~

最後までお読みいただきありがとうございます。

「データドリブン経営」は、単にデータを分析してそれを施策に活かせば良いというだけではなく、企業全体の社風や意思決定プロセスなども変革していかなければ実現できない取り組みになります。

したがって、大企業であれば「トップダウン型」で一気に推進していくほうがうまく行きやすく、逆に中小企業であれば経営層はあまりあれこれと口を挟まず、現場のデータ活用の取り組みに思い切って「投資する・任せてみる」、といったマインドも重要です。

ただ、あくまで「データドリブン経営」は企業経営の高度化や、企業価値の向上のための1つの手段でしかありません。

エスシードでは、お客様のデータドリブン経営への取り組みや推進をご支援しておりますのでお気軽にご相談ください。