AI(Artificial Intelligence:人工知能)や、IoT(Internet of Things)、RPA (Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)などの「デジタル技術」は目覚ましい発展を遂げています。

そうしたデジタル技術を活用して事業やオペレーションを変革していくことに対して「DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション」という言葉が使われるようになり、デジタルの力を経営に活かしていく「デジタル経営」に舵を切っていく企業も少しずつ増えてきています。

今回は、「うちの会社もDXを推進して、デジタル経営にシフトしていきたい!」と考えてる経営者の方のために、「DX」を簡単に理解するポイントと、「デジタル経営」を実現していくための4つのステップについて解説していきたいと思います。

今回は、DXの特徴やデジタル化に迷わないための4つのポイントをご紹介していきます。

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DXを理解するための3つの特徴

まずは、DXを簡単に理解するための3つ特徴について解説いたします。

以下の3つを理解することがポイントです。

  1. デジタル技術の活用とデータ活用
  2. 「変革」と呼べるレベルでのデジタル活用
  3. デジタル活用による恩恵を顧客が気づくことができる

①デジタル技術の活用とデータ活用

デジタル・トランスフォーメーション」と呼ぶからには「デジタル」な技術を使うということは当然と言えば当然ですが、従来との違いは、Web関連技術やセンサー技術の発展によって、

・現実の様々な出来事をデータ化できる
・企業間あるいは端末間などでデータのやりとりが簡単になった
・デジタル技術が企業経営や暮らしそのものに大きな影響を与えるようになった

ということが挙げられます。

様々な方法で収集されたデータは単独では利用ができない場合が多いため、それぞれのデータの「ひもづけ」を行って、データを蓄積していきます。

そうして蓄積したデータを可視化あるいは分析(機械学習等)したり、RPAを活用して「業務の自動化」をしたりといったことが可能になっています。

②「変革」と呼べるレベルでのデジタル活用

DXは「変革」と呼べるレベルでのデジタル活用である必要があります。

単なる「業務効率化」というレベルを超えて、これまで人間が行っていたデータ入力や処理、判断までデジタル技術で代替えしてしまうのです。

もちろん、今まで製造工場などでは高度な自動化や分業化は実施されてきましたが、デジタル技術の発展によってそうした「肉体労働」的な業務だけではなく、「顧客への対応」や「出荷の数量やタイミング、棚割りの判断」といった「人間でなければ対応できなかった業務」まで自動化あるいは自律化といったことが可能になってきています。

デジタル技術の活用の是非によって、企業経営に大きな差がついてしまうため、企業として何を目指すのか、顧客に提供する価値は何なのか、ということを改めて問い直す必要がある時代になっています。

デジタル活用による恩恵を顧客が気づくことができる

企業として「変革」を実行するのですから、その結果を提供される顧客にとっても商品やサービスの大きな変化に気づくはずです。

「自動車の自動運転」や「店舗の無人化」といった例は分かりやすいと思いますが、

・いままで自分がやらなければならなかったことを(デジタル技術が)自動でやってくれる
・いままで誰かにやってもらっていたことが、デジタル技術に替わる

といったことです。

今後は、「洗濯機」や「冷蔵庫」といった日常的に使用するものにもインターネットが繋がって、「季節や衣服による洗濯の方法を自動で判断する洗濯機」「好みに合わせた食材を自動で発注してくれる冷蔵庫」といったものが登場するでしょう。

そもそも、「洗濯機」や「冷蔵庫」という概念そのものがなくなってしまう可能性もあります。

これまで、そうした家電のような商品に対して顧客がどの程度満足しているのかどうかは、限られた人に対してアンケートを取ったり店頭で聞き取り調査をしたりしてマーケットリサーチをし、そのリサーチ結果から「この商品を買っている顧客の満足度や不満はだいたいこんな感じです」というように、全体を推測するしかありませんでした。

しかし、 IoT(Internet of Things)の技術によって「家電」と「インターネット」が繋がれば、だれが、いつ、どんな使い方をしているかといったことが、顧客本人に聞かなくてもデータとして取れてしまうのです。

もちろん、だからといって「マーケットリサーチ」自体がなくなるわけではありませんし、そうした手法を活用して顧客ニーズを明らかにすることは大切ですが、「一部のデータから全体を推測する(いわゆる従来から存在する統計学的な手法)」より、データサイエンス(自動的に収集した大量のデータをまるごと分析する)関連の技術がますます重要になってきます。

「デジタル経営」を推進するための4つのポイント

上記では、DXの特徴を述べましたが、実際に企業として取り組みをしていくときに、どんなポイントを押さえて「デジタル経営」を推進していけばよいのか、ということが以下の4つのポイントになります。

  1. 「デジタル」戦略の目標設定
  2. アナリティクス(分析)技術の活用
  3. 「デジタル」を適用していく「範囲」の定義
  4. 「デジタル」導入の壁を知る

①「デジタル」戦略の目標設定

これまで日本企業も様々なITシステムを導入して経営改革を狙ったり、業務効率化を図ったりということをしてきましたが、どうしても「技術主導型」になってしまって「何のためにやるのか」ということが置き去りにされていることが多いようです。

デジタル関連の技術に関しては日々様々なニュース記事や取り組み事例などがメディアに登場するため、推進を任される担当者にとっては「早く何かをしなければ」というプレッシャーになってしまうこともあるでしょう。

デジタル技術に限らず、データの活用や分析、AI開発といったことにも共通することですが、まず「目標・目的」、「誰が何をするのか」といったことを整理して取り組む必要があります。

目標や目的を洗い出して、どうすればそれを実現できるのかを考えてみると、「RPAでなくてもExcelのマクロで十分だった」「AIよりまずはBIに取り組んだほうがよいのでは」といったこともわかってきます。

以下はDX推進の際の取り組みテーマとして検討するべきものを整理したものですので、参考にして頂ければと思います。

1
目指す姿と解決したい事項
・デジタル化によって解決したいと考える現状の課題(経営レベル~業務レベルまで)
・その課題を解決するための具体的な将来像、ビジョン

2
KPIの設定
デジタル化による成果を経営上の数値として測定・評価するためのKPI設定(ステップ1での課題や目標がKGIになる)

3
関係者の役割と期待されること

・デジタル化を推進、実現するに向けて影響が生じる拠点、部署、組織など
・各関係者が持つリソースや期待、実現に向けての役割分担

4
分析に必要なデータと分析内容

・データの収集方法や活用方法。どのようなデータをどのように活用すればステップ1やステップ2に沿ったアウトプットが出せるか
・分析の要件や使用する手法、分析結果を使う利用者やその目的、活用場面など

5
データサイクルの確認
・データの「収集⇒蓄積⇒加工⇒分析⇒可視化⇒活用」といった流れの中でそれぞれにどんな技術が必要で工数はどの程度か、など

②アナリティクス(分析)技術の活用

デジタル技術を活用して競合優位性を実現するためには、アナリティクス技術(特にAI)は必須となってきています。

自社のビジネスモデルによって、どのようなデータを用意するべきか、どのような切り口で分析するか、といった様々なことを検討する必要がありますが、5GやIoTといった技術の発展によって、今後はますますデータの量・種類が増していきます。

データ利活用を通じて、いち早く「売上最大化」「コスト削減」「リスク管理最適化」といったことを実現していく企業でなければ、マーケットでの優位性を保つことが難しくなります。

分析するためには、異なるデータ同士での「ひもづけ」が必要であったり、必要なデータが揃わなかったり、人材が不足していたり、という様々な問題を乗り越えていく必要がありますが、乗り越えることによって実現できる企業経営はこれまでの常識を覆すものになる可能性が高いと言えます。

特に、AIの導入はまだまだハードルが高く、いままでデータをほとんど活用してこなかった企業がいきなり取り組もうとしても失敗する可能性が高くなります。

データ利活用をこれから検討していく企業や、あまりノウハウがない企業に関しては、AIよりもまずは手持ちのデータの集計や可視化に取り組むほうがよいでしょう。

AI導入の最終的な目標が、「意思決定の自動化」であったとしても、まずは多種多様なデータを様々な切り口から分析して「見える化」し、意思決定プロセスの改善やデータに対してのリテラシーを向上させ、分析による業務改善やビジネスモデルのステップアップといった成果が出てきたら、AIの導入も検討できる段階になってきます。

③「デジタル」を適用していく「範囲」の定義

デジタル化の効果は、企業、組織、拠点、部署といったものをつなげて全体的な最適化を実現し、意思決定までのスピードや質を上げていくことによって大きな成果を出すことに繋がります。

デジタル化、あるいはAIも同様ですが、いきなり「全社的に」導入、運用をするということは非常に難しく、まずは「業務レベル」でデジタル化を推進していくほうが、PDCAを回しやすかったり、関係者間の利害の調整などの手間も最小化できる可能性があります。

単独業務や単独拠点といったレベルでのデジタル化は様々な成功事例も出ており、仮に導入が失敗に終わったとしてもリスクも小さいです。

もちろん、経営層から見れば「経営に対してのインパクトが小さい」ということになり、現場での取り組みが評価されなかったり、理解が得にくいということもも考えられますが、「経営者の指示がなければ動けない」という現場では、企業全体として考えたときにも「DX」を実現することは難しいでしょう。

デジタル化を目指すにあたっては、「まずはどの範囲で何をやるのか」ということを明確にしたうえで取り組み、成功事例を積み重ねていくことでボトムアップを狙うことも大切になってきます。
(デジタル活用やデータ活用は基本的には「トップダウン」のほうがうまくいきますが、経営層のビジョンやリーダーシップが乏しいのであれば現場から「変革」を起こすしかありません)

④「デジタル」導入の壁を知る

デジタル化にあたっては、大きく分けると

① 技術的な壁
② 組織的な壁
③ 運用の壁

という3つの壁を乗り越えていく必要があります。

技術的な壁としては、企業の基幹システムやサーバー、ネットワーク、セキュリティ、アプリケーション、分析基盤など、様々なITシステム同士の連携や、各フェーズを担う人材を適材適所に配置できるかどうか、ということが考えられます。

組織的な壁としては、会社間や組織間の利害調整や投資対効果といった財務的な問題、デジタル化を推進するにあたっての人材が自社にいるのかどうか、といったことが挙げられます。

運用の壁としては、デジタル化戦略の結果として優れた意思決定の仕組みを構築したとしても、それを維持、継続、発展することが可能なのか、分析の結果をどの程度優先するのか、といったことが考えられます。

様々なことを実現できる「技術」というものはある程度揃ってきています。

それをどう活かすか、という「人間」が関与する部分が最も大きな問題です。

デジタル経営」は経営層から現場までが同じビジョンや目標、目的を共有して、それぞれの役割を担っていかなければ上手くいきません。

したがって、デジタル化、AI活用といった現代の企業経営は、

・自社のあるべき姿
・自社が顧客に対して提供する価値

といった本質的なものを改めて問い直す必要があるのです。

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おわりに ~「見極める力」がデジタル経営を実現する~

最後までお読みいただきありがとうございます。

うちの会社もDXを推進して、デジタル経営にシフトしていきたい!」と考えてる経営者の方のために、「DX」を簡単に理解するポイントと、「デジタル経営」を実現していくための4つのステップについて解説いたしました。

「DX」は言葉通り、「変革」を起こすのですから、全社的に取り組む必要があります。

とはいえ、いきなり全社的にデジタル技術の導入を行うことは難しく、乗り越える必要がある「壁」も存在するため、まずは範囲を絞って取り組み、成功事例を作っていくことが大切になります。

企業の経営活動のすべてを「デジタル化」していく必要はありませんし、それを実行するリソースにも限界があります。「どの分野をデジタルにして、どの分野を人の手で行うか」といった「目利き」が経営者にとって求められる時代になってきています。