中小企業がIT導入やデジタル化を外部の企業などに委託したい場合に、「相場がよくわからなくて委託が前向きに進まない」ということがあります。
一言で「IT」「デジタル」といっても、その範囲は非常に広いため、そうした領域の知識をあまり持ち合わせていない中小企業の場合は、外注費用などを判断するのに困ってしまうこともあるかと思います。
今回は、そうした中小企業のために、中小企業の業務でよく実施されるIT導入やデジタル化の領域での「委託費の相場」について解説をしていきたいと思います。
IT・デジタルを外注する場合の相場はどれくらいなのか?
中小企業に最低限必要なIT導入やデジタル化に関わる業務の例と、それを外注する場合の相場は以下のようないイメージになります。
ただし、相場は業者や地域、企業規模などによって変動するため、あくまで参考値として捉えてください。
ウェブサイト制作・運用
業務例:ウェブサイトのデザイン、開発、運用、更新
相場:初期制作費用として30万円~300万円程度、継続的な運用・更新費用として月額2万円~10万円程度
システム開発・導入
業務例:業務システムやオンラインショップ、予約システムなどの開発・導入
相場:100万円~500万円程度(要件や規模による)
クラウドサービスの導入
業務例:クラウドストレージ、CRM、ERPなどのクラウドサービスの導入・設定
相場:導入費用として5万円~20万円程度、継続的な利用費用が月額1万円~10万円程度(サービスによる)
社内ネットワーク・通信環境の最適化
業務例:インターネット回線の選定、Wi-Fi環境の整備、VPNの設定
相場:10万円~50万円程度
データ活用・分析
業務例:データ収集・整理、データ分析、レポート作成、機械学習・AIの活用
相場:プロジェクトごとに50万円~200万円程度
セキュリティ対策
業務例:セキュリティポリシーの策定、アンチウイルスソフトの導入、セキュリティ監査
相場:導入費用として5万円~20万円程度、継続的なサポートが必要な場合は月額1万円~5万円程度
IT教育・トレーニング
業務例:従業員向けのITスキル研修、セキュリティ意識向上研修
相場:研修1回あたり5万円~30万円
IT導入やデジタル化の相場や委託費を決める要因は何か?
では上記のような相場は、一体どのような要因が影響して決まってくるのでしょうか?
相場を決定している要因を理解することで、外注先からの見積もりなどの妥当性や信頼性を評価する材料になりますので、IT導入やデジタル化を発注する立場の担当者の方などはよく理解されておくとよいでしょう。
- プロジェクトの規模と複雑さ
- 技術的な難易度
- 期間による違い
- 地域による違い
- 業者の評価・実績
- サービス内容
- 契約形態
プロジェクトの規模と複雑さ
プロジェクトの規模が大きく、複雑な要件を持つほど、開発や運用にかかる時間と労力が増えるため、外注費用も高くなります。
例えば、小規模なウェブサイト制作では、初期費用が30万円程度かかる場合がありますが、複数言語対応やオンラインショップ機能が必要な大規模なウェブサイト制作では、初期費用が300万円以上かかることもあります。
技術的な難易度
専門的な知識や技術が必要なプロジェクトほど、高いスキルを持つ専門家が必要となり、外注費用も高くなります。
例えば、AIを活用した顧客対応システムを導入する場合、高度な技術が必要であるため、外注費用が数百万円から数千万円かかることがあります。
期間による違い
プロジェクトの期間が長いほど、外注先が費やす時間が増えるため、費用も高くなります。
あるいは、通常では5か月程度で実施するウェブサイトのリニューアルを3ヶ月で行うといった場合、期間が短いため外注先による開発費用が数十万円~数百万円程度高くなることがあります。
地域による違い
東京都内の中小企業が外注先を地方の開発会社に依頼する場合、人件費やオフィススペースの費用が東京都内より安いため、外注費用が数十万円程度低くなることがあります。
あるいは逆に、地方の企業が東京などの首都圏の企業にIT導入やデジタル化を依頼する場合は、地元の企業に委託する場合と比較して数十万~数百万円程度高くなる場合があります。
業者の評価・実績
業者の評価・実績によっても外注費用は大きく変動します。
例えば、評判の良いウェブ制作会社にホームページ制作を依頼する場合、その評価や実績により、外注費用が数十万円程度高くなることが一般的です。
サービス内容
委託業者がどのようなサービス内容を提供しているのかによっても外注費用は変わります。
例えば、クラウドサービスを導入する際、初期設定やデータ移行だけでなく、継続的なサポートや定期的なセキュリティ監査が含まれている場合、外注費用が数十万円から数百万円程度高くなることがあります。
契約形態
例えば、ウェブサイトのデザインリニューアルを依頼する際、業者との契約形態が固定費用と時間単価の場合などで支払う金額が変化します。
プロジェクトの進捗によって費用が変動し、最終的には200万円~~400万円程度になることがあります。
また、成果報酬の契約形態の場合、特定の成果指標を達成した際に支払う費用が決まります。この場合、費用は達成された成果に応じて変動し、最終的な費用は100万円~数百万円の範囲で変わることがあります。
以上のように、IT導入やデジタル化の外注に対しては、様々な要因が影響して委託費用が決まってきます。
また、近年ではベンダーやコンサルティングなどを行う企業側の競争も激しくなっているため、そうした企業が案件を獲得するための営業費用なども増えてきていたり、IT人材の全体的な不足などによる賃金上昇といった要因も影響しているため、外注費用が高くなる傾向があります。
委託・外注費用を少しでも下げるためのポイントは?
委託・外注費用は低ければ低いほどよいという訳ではありませんが、予算の限られる中小企業にとっては、「ある程度の質を保ちながら、できるだけ安くやってくれるほうがいい」というのが本音かと思います。
ここでは、IT導入やデジタル化に関する委託費用を少しでも下げるために必要な工夫について解説いたします。
- 事前調査や計画をしっかりと立てる
- 複数の業者から見積もりを取る
- 自社でできる部分は、自社で実施する
- 柔軟な契約形態を選ぶ
- 継続的なコミュニケーションの実施
- 成果をモニタリングし、効果的な改善策を実施
- 長期的なパートナーシップを築く
- フリーランスや副業人材を活用する
事前調査や計画をしっかりと立てる
プロジェクトの目的や要件を明確にし、必要な機能や範囲をしっかりとリサーチして計画します。
適切な調査と計画があれば、プロジェクトのスコープが明確になり、無駄なコストを削減できます。
例えば、顧客管理システムを導入することを目指す場合に、プロジェクトの成功に向けて事前に市場調査を行い、自社のニーズに適したシステム要件を明確化する、といったようなイメージです。
複数の業者から見積もりを取る
複数の業者から見積もりを取得し、それらを比較検討することで、最もコストパフォーマンスが高い業者を選ぶことができます。
例えば、ウェブサイトのリニューアルを検討する場合に、いくつかの業者から見積もりを取得し、最終的な完成系のイメージやアフターサービスなどを比較して、自社にとって最もコストパフォーマンスが高い業者を選択する、といったようなイメージです。
自社でできる部分は、自社で実施する
委託する範囲を絞り、自社でできる部分は自社で対応することで、委託費用を抑えることができます。
例えば、新しいECサイトの開発プロジェクトを進める場合に、デザインやコンテンツ作成は自社で行い、システム開発だけを外注することで委託費用を抑える、といったようなイメージです。
柔軟な契約形態を選ぶ
固定費用ではなく、時間単価や成果報酬など柔軟な契約形態を選ぶことで、支払額を最適化できます。
例えば、クラウドサービスの導入を検討する際に、委託先と時間単価ベースの契約を選択し、必要に応じて外注先と協力して作業を進めることでコストを最適化する、といったようなイメージです。
継続的なコミュニケーションの実施
外注先との継続的なコミュニケーションを図り、プロジェクトの進捗状況や課題を共有することで、予期せぬ追加費用や遅延を防ぐことができます。
例えば、外注先と定期的なミーティングを設定し、プロジェクトの進捗状況や課題を共有することで、リスクの発生の防止や発見、問題や課題に対する対応策を双方でしっかりと議論していく、といったようなイメージです。
成果をモニタリングし、効果的な改善策を実施
プロジェクトの成果を定期的にモニタリングし、効果的な改善策を実施することで、コスト効果を最大化できます。
例えば、データ分析ツールを導入してマーケティング活動の効果を定期的に評価し、分析の結果として効果的な改善策を実施し、広告費用を削減する、といったようなイメージです。
長期的なパートナーシップを築く
外注先との長期的な関係を築くことで、相互理解が深まり、効率的な業務遂行が可能となり、コスト削減に繋がります。
例えば、ITインフラの運用・保守を長期的に外注することで、外注先との相互理解が深まり、効率的な業務遂行が可能になるといったイメージです。
フリーランスや副業人材を活用する
近年では、フリーランスや副業人材なども非常に増えてきていますので、そうした人材を活用することもIT導入やデジタル化のコストを下げる上で検討したいポイントです。
顧問契約のように「アドバイスだけ」といったような形にし、アドバイスに沿って作業は自社の社員が行うようにすればかなりコストを下げることができます。
あるいは、自社の社員と同じように業務をこなしてくれるフリーランスを活用するという手もあります。
ただし、フリーランスに対して業務を委託する場合は、期待する成果や業務要件などをはっきりと指示だしするディレクション能力が求められるため、活用するハードルはそれなりに高いと言えるでしょう。
おわりに ~外注の「活用力」がデジタル化のカギ~
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は、中小企業が「IT化・デジタル化」を委託するときの「相場」というテーマで、デジタル化の各領域の相場観や、相場を決定する要因、なるべく費用を抑えて外注するためのポイントなどを解説いたしました。
中小企業が自社のリソースだけでデジタル化を推進し実現していくのはリソースの問題などから、かなり難しいのが現状です。デジタル化の実現には外注などを「活用する力」が求められていると言えるでしょう。
IT導入やデジタル化の外注化や、コストを抑えた実現方法についてお困りの際はぜひお気軽にエスシードにご相談ください。