社会や企業活動の急速な「デジタル化」に伴ってニーズが高まっている「デジタル人材」について今回は解説していきたいと思います。

「自社にデジタル人材がいないから、デジタル化が進まない…」「そもそもデジタル人材って、どんなことができる人材なの?」といったお困りや疑問を持つ経営者や担当者の方の参考になりましたら幸いです。

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デジタル人材とは何か?

「デジタル人材」という言葉に明確な定義はありませんが、一般的にはデジタル技術やデジタルツールを駆使して、ビジネスや社会の問題を解決することができる人材のことを指します。

具体的には、プログラミングソフトウェア開発データ分析人工知能インターネットマーケティングデジタルデザインソーシャルメディア運営などのスキルを持っている人々が含まれます。

近年、デジタル技術の普及に伴い、デジタル人材の需要が急速に増加しています。企業や組織は、デジタル化に取り組むことで生産性の向上や新しいビジネスモデルの創出を目指しており、そのためにデジタル人材を積極的に採用しています。

また、自己啓発やキャリアアップの観点からも、デジタルスキルを身につけることは重要な課題となっています。

デジタル人材にはどんな種類があるのか?

とは言え、「デジタル人材」といえど上記でご紹介したような業務をすべて一人で行えるような人というのはかなり稀です。

特に中小企業においては、そうしたフルスペックの人材を獲得することはほぼ不可能に近いと考えてよいでしょう。

ここで大事になるのは、デジタル人材にも「種類」がある、ということです。デジタル人材の「種類」を理解することで、自社の課題や方向性などに合った人材を採用・配置できる可能性が高まります。

以下に、デジタル人材の種類をいくつかご紹介いたします。

デザイン領域のデジタル人材

企業のWebサイトや広告、POP、パンフレットといったことを企画・制作し、集客やブランディングに貢献する人材として以下のような職種が挙げられます。

  1. UX/UIデザイナー
  2. グラフィックデザイナー
  3. イラストレーター
  4. ビジュアルデザイナー
  5. 3Dデザイナー

UX/UIデザイナーは、Webやアプリのユーザー体験とインターフェース設計を担当します。

グラフィックデザイナーは、印刷物や広告のデザインを制作し、企業のアイデンティティを表現します。

イラストレーターは、書籍や広告、Webなどの視覚表現を制作します。

ビジュアルデザイナーは、広告やWebのデザイン、UIやパッケージの制作、企業ブランディングなどを担当します。

3Dデザイナーは、3DCGソフトを使用して、映像制作やゲーム、商品デザインなどの3Dモデリングを担当し、アニメーション制作にも携わります。

こうした職種は企業のイメージアップやブランディング、集客などにも大きく貢献する職種です。

特に近年ではWebサイトやアプリで顧客を引き付けるデザイン性が重要になってきているため、こうした職種の活用の場は広がっていると言えます。

エンジニアリング領域のデジタル人材

ハードウェア、ソフトウェアの開発・運用や、社内のシステム・ネットワーク等に対応できる人材として以下のような職種が挙げられます。

  1. 電子エンジニア
  2. ソフトウェアエンジニア
  3. ハードウェアエンジニア
  4. システムエンジニア
  5. ネットワークエンジニア

電子エンジニアは、電子部品を用いた回路設計・開発・製造を行い、電子機器の信頼性を確保することが仕事です。

ソフトウェアエンジニアは、ソフトウェアの開発・保守・改善を行い、ユーザーが使いやすいアプリやシステムの開発に携わります。

ハードウェアエンジニアは、マイコン、マイクロプロセッサ、ASICなどのハードウェアの設計・開発を行い、高性能かつ低コストの製品を生み出します。

システムエンジニアは、ネットワークやシステムの設計・構築・運用を行い、企業内システムやWebサービスの開発・運用を担当します。

ネットワークエンジニアは、コンピュータや通信機器を使用したネットワークの設計・構築・運用を行い、ネットワークの高速化や安定化を担当します。

企業活動の多くがデジタル技術の力を借りて実施されてきている現代においては、エンジニアリング領域に対応できるかどうかというのは非常に大きなポイントになってきています。

プログラミング領域のデジタル人材

Webサイトやアプリなどの開発、AIのアルゴリズム設計などのプログラミング領域に関するデジタル人材としては以下のような職種が挙げられます。

  1. フロントエンドエンジニア
  2. バックエンドエンジニア
  3. モバイルアプリ開発者
  4. AIエンジニア

フロントエンドエンジニアは、Webサイトやアプリの外観や動作に関するプログラム開発を担当します。HTML、CSS、JavaScriptを用いた開発が基本となります。

バックエンドエンジニアは、サーバーサイドの開発やデータベースの設計・開発を行い、Webアプリケーションの基盤構築を担当します。

モバイルアプリ開発者は、スマートフォンアプリケーションの開発を担当します。iOSやAndroidなどのOSに合わせたプログラム開発が必要です。

AIエンジニアは、機械学習・ディープラーニング技術を用いたシステム開発を担当し、自動化や予測分析などの課題を解決します。

近年ではWebサイトやスマートフォン向けアプリなどを活用してビジネスを行うことも当たり前になってきていますので、プログラミング領域に関する人材のニーズはまだまだ高まっていくでしょう。

マーケティング領域のデジタル人材

WebサイトやSNSの活用による集客・マーケティングなどの領域を担当するデジタル人材としては以下のような職種が挙げられます。

  1. デジタルマーケティングディレクター
  2. Webマーケター
  3. SEO/SEMスペシャリスト
  4. ソーシャルメディアマネージャー
  5. MAスペシャリスト

デジタルマーケティングディレクターは、企業のデジタルマーケティング戦略の立案や運営を担当します。

Webマーケターは、企業のWebサイトを使ったマーケティング戦略を立案し、運営を担当します。

SEO/SEMスペシャリストは、Google検索などの検索エンジン上位表示を目指し、SEOやSEMの施策を行います。

ソーシャルメディアマネージャーは、各種SNSを活用したマーケティング戦略の立案や運営を担当します。

MAスペシャリストは、顧客データを基にしたマーケティング自動化ツールの導入・運用を担当します。

企業の顧客獲得や顧客との関係性構築においてデジタルマーケティングのニーズは非常に高まっており、企業の規模や業種に関わらずデジタルマーケティングは必須になってきていると言えるでしょう。

データ利活用領域のデジタル人材

顧客から収集したデータや、IoTなどのデバイスから収集できるデータ、社内の勤務状況などに関するデータなど、様々なデータの利活用の領域におけるデジタル人材としては以下のような職種が挙げられます。

  1. データストラテジスト
  2. データアナリスト
  3. データサイエンティスト
  4. データエンジニア

データストラテジストは、ビジネスの戦略に必要なデータを収集、分析し、データ利活用の戦略を構築していきます。

データアナリストは、ビジネス上の問題を解決するためにデータを分析し、要件を特定し、ダッシュボードやレポートを作成することが主な業務です。

データサイエンティストは、大量のデータを集め、分析し、洞察を見つけるために統計学、機械学習、データマイニングなどの高度な技術を使用します。

データエンジニアは、ビッグデータ処理プラットフォームやデータパイプラインの開発、保守、スケーリングを行います。

デジタル化をする」ということはイコール「データとして記録できる」ということになるため、企業のデジタル化を進めれば進めるほどデータ利活用が重要性を増していきます。

コンサルティング領域のデジタル人材

デジタル化を推進していく際の問題や課題を発見・整理したり、各種ツールの導入などを支援するコンサルティング領域のデジタル人材としては、以下のような職種が挙げられます。

  1. ITコンサルタント
  2. デジタルトランスフォーメーションコンサルタント
  3. ビジネスアナリスト
  4. システムコンサルタント
  5. テクノロジーコンサルタント

ITコンサルタントは、クライアント企業のビジネスニーズを満たすためのITソリューションの提供や、システム開発プロジェクトの管理・運営を行います。

デジタルトランスフォーメーションコンサルタントは、クライアント企業のデジタル戦略の策定や、ITシステムの最適化を提案します。

ビジネスアナリストは、企業のビジネスプロセスを改善するための課題分析やシステム要件の抽出を行います。

システムコンサルタントは、システムの企画・設計・開発・運用における技術的な問題に対してコンサルティングを行います。

テクノロジーコンサルタントは、クライアント企業のビジネス戦略に沿ったIT技術の導入を提案し、実装までの支援を行います。

このように一言で「デジタル人材」といっても領域の違いや役割の違いによって多くの職種があるため、「デジタル人材がいない・足りない」というように一括りにせずに、自社のどの領域にどんな人材が必要なのかをしっかりと見極めることが重要です。

自社の「デジタル活用度」に応じて必要なデジタル人材を見極める

では、どのようにして自社に必要な「デジタル人材」を見極めればよいのでしょうか。

1つのヒントになるのは、「自社が現在、どの程度デジタルを活用できているのか」という「デジタル活用度」に応じて、必要な人材を配置するという考え方です。

企業の「デジタル活用度」は、一般的に以下のような段階を踏んでいくとされています。

  1. 【レベル1 非デジタル企業】 :アナログで業務を行っており、デジタルツールの導入がほとんどない企業。
  2. 【レベル2 デジタル化の開始】:業務の中で一部にデジタルツールが導入され、徐々にデジタル化を進めている企業。
  3. 【レベル3 デジタル化の途中】: 一部の部門でデジタルツールが活用され、データの活用やプロセスの自動化が進んでいる企業。
  4. 【レベル4 デジタル化の本格化】: 全社的にデジタルツールが活用され、データ分析やAI技術の活用によって業務プロセスが最適化されている企業。
  5. 【レベル5 デジタルトランスフォーメーション】: デジタル技術を全面的に活用し、ビジネスモデルの変革や新規事業の開発に取り組んでいる企業。

現状、日本の企業の多くは「レベル1」あるいは「レベル2」に留まっているとされていることから、まずは「レベル1をレベル2にするために必要なデジタル人材」と「レベル2をレベル3にするために必要なデジタル人材」を採用あるいは育成することが求められると言えます。

デジタル活用度「レベル1」を「レベル2」にするために必要なデジタル人材

業務の多くが「アナログ」で実施されており、これからデジタル化を進めていく企業にとっては、専門的で特殊なスキルを持った人材ではなく、企業のデジタル化を推進していけるような人材が必要です。

デジタル化の重要性を理解し、デジタル化を推進するリーダー役が必要です。

それを「経営者や役員」といったような上層部からスタートするのか、「現場レベルの担当者」からスタートするのかは企業によって様々ですが、いずれにしても経営者に「デジタルに対する理解・意欲」といったものが一定はないと、社内のデジタル化の議論が前に進みづらくなります。

また、中小企業においては「IT部門」のようなものがそもそも存在していない場合や、ITの業務だけを専門に実施する人材がいない場合がありますが、普段からハードウェアやソフトウェアのトラブルシューティング、セキュリティ対策、ネットワーク管理などをある程度対応している人材は少なからず存在すると思いますので、そうした人材の力を借りていくことが必要になるでしょう。

デジタル活用度「レベル2」を「レベル3」にするために必要なデジタル人材

ITシステムやデジタルツールはある程度導入されているものの、業務の自動化やデータ活用による改善には至っていない」という企業が次に進むために必要な人材を見ていきます。

従業員数が50人~100人くらいを超えてくると、こうしたフェーズに突入する企業が多くなります。

こうした企業に必要には、以下のようなデジタル人材が必要になります。

  1. システムエンジニア:システムの導入や運用、改善を担当する人材。
  2. プロジェクトマネージャー:デジタル化プロジェクトのマネジメントを担当する人材。
  3. プロセス改善コンサルタント:業務プロセスの自動化や改善を担当する人材。
  4. セキュリティエキスパート:デジタル化に伴う情報セキュリティの強化を担当する人材。
  5. データアナリスト:膨大なデータの分析や活用方法の提案を担当する人材。

デジタル化の開始から途中への移行では、より高度なデジタル化を実現するための人材が求められます。

より複雑なシステムの構築と運用、改善を実施するためにシステムエンジニアが必要になったり、デジタル化を全社的に進めていく際のプロジェクトマネージャーなども必要です。

また、デジタル化する領域の業務プロセスを整理しデジタル化の要件を定義できる人材や、社内のセキュリティ対策を実施できるエキスパート、デジタル化によって様々なデータが収集され、それを活用していくデータアナリストなどが必要となってきます。

大企業であれば、「すべて自社で賄う」あるいは「大部分を外注する」といったような「人的資産」や「豊富なキャッシュ」を用いた戦術を取ることができますが、中小企業においてはそうした極端なやり方は取りづらいでしょう。

したがって、中小企業においては「自社でどこまでできるのか?」「外部に任せるべき部分はどこなのか?」といった「見極め」が非常に大切になります。

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おわりに ~まずはデジタル人材の「中身」を理解することから~

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回は「デジタル人材とは何か?」というテーマで、デジタル人材の定義や、デジタル人材の領域・職種などを詳しく解説いたしました。

「デジタル人材」と一括りにしてしまうと、デジタル領域のことを何でもできるスペシャリストのようなイメージを持ってしまいがちですが、社内の業務の領域に合った人材がそれぞれ存在していることがご理解頂けたかと思います。

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