中小企業において「業務にITを導入したいけど、どうしたらいいかわからない」「ITを導入したものの、なかなかうまく活用できていない」という経営者や担当者の方は多いのではないでしょうか。

そこで今回は、中小企業がどうすればITをうまく導入し、活用できるのか、というポイントについて解説していきたいと思います。

「商品の製造」や「バックオフィス業務」「販売業務」といった業務へのIT活用を考えている方の参考になりましたら幸いです。

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中小企業のIT導入や活用はなぜ進まないのか??

近年、中小企業が置かれているビジネス環境は厳しさを増してきています。

消費者のライフスタイルの変化・多様化や、新型コロナウィルスの登場による価値観や生活様式の変化、不安定な世界情勢による為替リスクや燃料・物価の高騰など、挙げればキリがないほど中小企業の経営に大きな影響を与える要因が増えています。

そうした中で、これまでより少ない人数でなおかつこれまで以上の生産性を出していかなければいけない中小企業にとっては、「IT化」あるいは「デジタル化」というものは避けて通れない状況になっています。

しかし、中小企業のIT化はなかなか思うように進んでいないとされています。なぜでしょうか。

「中小企業庁」のホームページによれば、IT化が進まない要因として以下のようなことが述べられています。

  1. 投資効果が不透明
  2. 資金の不足
  3. 具体的な活用方法が不明
  4. 人材の確保が困難

これらの要因によってIT化が進まないとされていますが、これらに共通して考えられるのは「ITに関する知識の不足」であると感じます。

どういうことか、少し例を見ていきましょう。

「投資効果が不透明」と感じるのはなぜか?

中小企業がITに対して投資をする場合、投資の効果が不透明だと感じる理由はいくつか考えられます。

例えば以下のようなことです。

  • IT投資の効果が直接的に現れにくい
  • 技術の変化が激しい
  • 費用対効果が見込めない場合がある

IT投資の多くは、システムの構築や改善など、時間がかかるプロセスを必要とします。そのため、中小企業の経営者は、投資の効果が現れるまでの期間を見据える必要がありますが、どうしても短期的な成果を求めがちになるため、ITに対して投資をする意欲が薄れます。

また、ITの技術は常に進歩しているため、投資したシステムが一定期間後に陳腐化してしまう可能性もあります。投資したシステムが将来的にどのような価値を持つのかを予測することが難しいため、投資の効果が不透明となることがあります。

そして、IT投資には場合によっては多額の費用がかかるため、投資の対価として得られる利益が見込めない場合があります。そのため、投資の費用対効果を慎重に考慮する必要がありますが、ITの効果を見積もることは難しい場合があり、投資の効果が不透明になる、ということが起こります。

「まさにそれが原因でITが進まない!」と感じる方も多いかもしれませんが、この壁を乗り越えるのは決して簡単ではありません。

具体的な活用方法が不明」と感じるのはなぜか?

会社の業務にITを導入、活用したいと考えているということは、業務やビジネスに対して何かしらの問題点や課題感を感じているからにほかならないかと思います。

ですが、いざITを導入しようとすると、「活用方法がわからない」となってしまうのはなぜなのでしょうか。以下のような理由が考えられます。

  • ITシステムの種類が多岐にわたるため
  • 技術の進歩が早いため

ITシステムは多種多様であり、中小企業でも「SFA」「ERP」「CRM」「BI」など、生産管理や営業管理、マーケティング、データ分析など様々なツールを導入しなければならないケースが増えてきています。

「人材不足」ということにもつながりますが、中小企業にはITシステムの知識や技術を保有している人材が少なく、どのようなITシステムが自社に適しているかを判断することが難しいため、投資の際にITの活用方法がわからないと感じることが多くなるのです。

また、ITは進化が早く、日々新しいシステムやツールが続々とリリースされています。そのため、中小企業がITの活用方法を理解しようとしても、新しいシステムやツールが次々に出現し、追いつくことができないということもあるでしょう。

こうした理由から、「ITを導入して活用したいが、よくわからないから手が出せない」という状況に陥ってしまうのが、日本の中小企業のIT導入・活用が進まない大きな要因であると思います。

実際、中小企業庁が公開している「中小企業白書(2022年版)」においても、「費用対効果がわからない」「適切なツールやシステムがわからない」といった理由がIT導入・活用を妨げている大きな要因となっていることが分かります。

中小企業白書 2022年版より

IT導入・活用ができる企業とそうでない企業の差は何か?

では、こうした中小企業のIT導入・活用の問題点が理解できたところで、最も気になるのは「どうすれば上手くいくのか?」ということかと思います。

ここでは、上記でもご紹介した「中小企業白書」を参考に、IT化に成功している企業とそうでない企業の差を見つけ、成功に導くためのヒントを探っていきたいと思います。

IT化・デジタル化に積極的な企業は普段から何をしているのか?

中小企業においても、IT化やデジタル化に積極的な企業とそうでない企業が存在することが、中小企業白書のデータから見て取ることができます。

2020年および2021年において、「自社のデジタル化が進展したのかどうか」という質問に対するアンケートの結果が以下となっています。

中小企業白書 2022年版より

結果を一言で表現すれば、「ITに対してお金をかければ、ITの導入や活用は進む」ということになります。

お金をかければ取り組みが進むのは当然ではありますが、問題は「ITに対してお金をかけている企業は、なぜお金をかけることができるのか?」ということです。

そのヒントになるのが以下の結果です。

中小企業白書 2022年版より

これは、IT化やデジタル化に取り組む際に、普段どのように情報収集を行っているのか、ということを聞いた結果になっています。

中小企業のIT化が進まないのは、ITに対する理解や知識が不足している」という要因が大きいことは先ほど述べましたが、この結果を見ると、IT投資に積極的な企業ほど、普段から様々なメディアを通じてIT関連の情報を得たり、営業活動や取引先、専門家などからもIT関連の情報を積極的に得ているということが伺えます。

つまり、IT投資に積極的で成功している企業は、普段からITに関する情報や知識を得ることにも前向きであり、ITを導入するメリットや投資効果に対しても前向きな考え方や議論ができている可能性が高い、ということです。

一方で、「IT投資は行っていない」という企業については、「情報収集を行っていない」という回答がとても多くなっており、ITのことをそもそも知ろうとしていない、という状況が見受けられます。

ITは確かに幅が広く、複雑な概念があったり進化のスピードが速いため、理解するのは大変なことです。

ですが、まずは「知ろうとする意欲・意識」があるかどうか、という点が中小企業のIT化・デジタル化においては明暗を左右する非常に大きなポイントであると言えます。

情報を収集するのにもお金がかかるのでは?」と思われるかもしれませんが、普段の企業活動の中で大金を使って情報を得なければいけない場面はほぼ皆無のはずです。

実際、インターネット検索などで無料で様々な情報が取れるのは多くの人が知るところですが、GoogleやNTTドコモといった企業が「無償」で提供している「デジタルスキル取得プログラム」といったサービスには、多くの企業が「関心がない」「知らない」と回答しています。

したがって、「IT導入・活用ができる企業とそうでない企業の差」は、「ITのことを理解しようとする気持ちや姿勢があるかどうか」という点に尽きると思います。

もちろん、手持ちのキャッシュの状況や業種・業態などによる差も考えられますが、無償で活用でき、なおかつ高品質なITサービスの存在や、全業種に対するIT活用やデジタル化が必要とされている以上、「うちの会社ではITはできない」という言い訳はできません。

よって、「IT導入や活用、デジタル化がなかなか進まない」という企業は、まずはそうした領域に少しでも「興味を持つ」ということが第一歩になると思います。

ITを導入するために、まずやるべきことは何か?

最後は、ITを実際に導入していくことを検討する際に、何をすればよいのか? について解説いたします。

以下の3つの点が特に重要になります。

  1. 情報収集をする
  2. 課題感を社内で共有する
  3. 予算を確保する

情報収集をする

これまで述べたように、中小企業のIT化には「情報収集」が非常に大切になります。まずは「情報を集める」という意欲を持つところからスタートしましょう。

情報の集め方については、「インターネットで検索してみる」「市場調査を行う」「ユーザーレビューや口コミを参考にする」「専門家のアドバイスを受ける」「デモやトライアルを利用する」といった方法が考えられますので、まずは自社に合った情報収集のやり方を考えてみるところからスタートしてもよいでしょう。

情報収集をしていく際は、しっかりと「記録」を残していきましょう。ExcelでもPowerPointでもなんでもよいですが、どのソースにどんなことが書いてあったのか、といったことなどをしっかりと残していきましょう。社内で共有する際にも役立ちます。

課題感を社内で共有する

IT導入を進める際は、経営者や担当者が独りよがりになってしまっては大体の場合失敗します。

IT導入をしなければいけない理由や、社内の業務の何が課題になっているのかをしっかりと社内で共有していきましょう。

ITシステムの導入は、従業員が日々行っている業務に大きな影響を与えるため、従業員の意見を聞くことも重要です。

また、従業員の意見を聞いた後は、ITシステムの導入によって解決できる可能性のあるアイデアを共有するのもよいでしょう。

メリットやデメリットなどを話し合うことも重要です。

予算を確保する

導入したいITのツールやシステムに関する情報収集や、社内での共有が一通り済んだら、ITを導入するための「予算」を確保しましょう。

その際には、できるだけ具体的にIT投資にかかるコストを見積もることが重要です。

考えられるコストとしては、「ハードウェア」「ソフトウェア」「導入費用(イニシャルコスト)」「保守費用(ランニングコスト)」などが考えられます。

また、IT導入に必要な予算を割り当てる際には、企業の財務状況や今後の経営計画を考慮して適切な予算の割り当てを行うことが必要です。予算を割り当てる際には、ITシステム導入にかかる費用だけでなく、トレーニング費用やシステム更新費用などの将来的な費用も見越して予算を立てることが重要です。

資金調達についても、「自己資金での投資」「融資」「補助金の申請」「リース契約」などが考えられるため、自社の財務状況にあった予算捻出が重要になります。

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おわりに ~まずはITに対する苦手意識をなくすこと~

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回は「中小企業がITを導入・活用できない理由」として、実際のデータなども交えて解説いたしました。

中小企業のIT化やデジタル化には、予算や人材不足など様々なハードルがあることは事実ですが、まずはITに対する苦手意識をなくし、興味を持ってみることが大切です。

ITにお困りの企業様が、少しでもITに前向きになれるようにエスシードでも全力でサポートさせていただきますので、ぜひお気軽にエスシードにご相談ください。