日本の製造業・ものづくりの生産プロセスにはいまだ手作業や紙ベースの文書でのやりとりなど、昔ながらの非効率的な業務がまだまだ多く、「業務効率の改善」は解決すべき問題の一つです。

そうした中で、最近は製造業においてもAIやIoTといったデジタル技術や、業務効率化ツールを活用することで「自動化」や「プロセス改善」が進み、「生産性向上」やコスト削減につながった事例も出てきています。

本記事では、製造業の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に着目して、製造業のデジタル活用力を上げていく方法や、各種デジタル技術の導入事例、おすすめのツールをご紹介いたします。

この記事でわかること

✔ 製造業にデジタル活用が求められている理由がわかる
✔ 製造業のデジタル活用で成功した事例がわかる
✔ 製造業のデジタル化にオススメのITツールがわかる

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製造業に「デジタル」が必要な理由とは?

現在、あらゆる業界でデジタル化やDXが進められており、製造業もその例に漏れません。

デジタル化はDXを実現するための必須の要素であり、デジタル化なくしてDXはあり得ないと言えます。

では、製造業においてなぜデジタル化が必要なのでしょうか。

さまざまな理由がありますが、ここでは以下の3つの視点でデジタル化の必要性を見ていきます。

  1. 市場環境の大きな変化への対応
  2. IoTなどデジタル技術の劇的な進歩
  3. 少子高齢化による人手不足の進展

1. 市場環境の大きな変化への対応

製造業においては、市場環境が大きく変化しているため、他の業界と同じくデジタル化が必要不可欠となっています。

例えば、消費者のニーズや嗜好が多様化しており、個別化された製品やサービスの提供が必要です。

生産ラインの柔軟性が高いと、多様化するニーズに対して迅速な生産計画のカスタマイズなどが可能になります。

デジタル化は、生産プロセスを柔軟かつ効率的に変更するための有力な手段として取り入れられています。

また、競争環境の変化も製造業を悩ませる問題です。

海外製品との競合や新興企業との競合など、製造業界における競争環境はますます厳しいものになっています。

デジタル技術を活用することで効率的かつ迅速な製品開発が可能となり、競業他社に先駆けて新しい製品やサービスを提供でき、市場における優位性の確保につなげられます

2. IoTなどデジタル技術の劇的な進歩

IoTやAI、ビッグデータなどのデジタル技術の進歩は、製造業において生産プロセスの大きな変革を引き起こしています。

これらのデジタル技術を利用することで、生産ライン全体を一体管理できるだけでなく、リアルタイムでのデータ収集や分析が可能となります。

そして、収集したデータから不良の発生原因を特定してその改善策を打ち出すなどの品質向上業務効率化効率的な生産体制の構築省力化コスト削減などにつなげられます。

さらに、IoT技術を活用した製品の開発も進んでおり、例えば製品にセンサーや通信機能を組み込むことで、製品の遠隔監視や保守、アップデートなどをリアルタイムで行えるようになり、顧客サポートの向上や製品の品質改善といったことも可能になります。

3. 少子高齢化による人手不足の進展

少子高齢化が進む現代社会において、製造業は人手不足の課題に直面しています。

自動化が進んでいるとはいえ、製造業には高度なスキルを要する業務はまだまだ残っており、専門的な技能や知識を持つ人材が不可欠です。

一方、少子高齢化の進展により、製造業では人材確保が難しくなっており、企業の成長や競争力の向上に直結する人材確保が喫緊の課題となっています。

このような状況において、デジタル技術を使って人手不足の解消に取り組む会社が増えています。

例えば、熟練者が持つ品質判定の技術をAIに学習させて新人や派遣社員に判断基準を伝えたり、熟練者の動きや操作をAIが観察・模倣してさまざまな業務や作業のスキルを継承したりなどが挙げられます。

また、デジタル技術を生かして自動化をさらに進めることで、省人化を実現しようとする取り組みもあり、このような取り組みは、日本の製造業界全体の成長や競争力の向上につながることが期待できます。

製造業におけるデジタル化の事例を紹介

では、製造業の企業が実際にどのような形でデジタルを活用し、何を実現しているのかについてここでは事例を3つご紹介いたします。

中小企業の参考になるよう、大企業の事例ではなく中小企業のデジタル活用事例を中心にご紹介いたします。

ベテランの技術を可視化してAIへ技術連携した事例(株式会社IBUKI)

山形県にある金型メーカーのIBUKIではベテラン技術者から若手への技術伝承を進めていますが、一人前になる前に会社を辞めてしまう、技術伝承に十分な時間を割けないといった問題に悩まされていました。

対策として人から人へ伝承するのではなく、人からAIへ伝承することとしました。

AIに技術を蓄えてそれを後世に引き継ぐという考え方です。

ベテラン技術者の思考を「ブレインモデル」というネットワーク図で表現することで、誰もが熟練者の技術や知識を活用できます。

例えば、ある不具合について、不具合の要因や原因追究に必要な情報は何かなどを職人に詳しく聞き、得られた情報をネットワーク図に落とし込むことで、職人のノウハウをデータベースに蓄積します。

このネットワーク図とAIを連携させることで、職人の勘が必要だった金型の修正が若手でも容易になったとのことです。

クラウドサービスを開発して業務の高効率化を実現した事例(久野金属工業株式会社)

金属加工メーカーの久野金属工業では、生産管理などの基幹システムから自社のホームページまで、自社専用のシステムを開発し、既存のパッケージやクラウドサービスと組み合わせて、業務の効率を上げています。

出典 : 日本電信電話ユーザ協会 -久野金属工業株式会社-モノづくりの未来に挑戦する金属プレス部品メーカーのICT戦略

製造ラインでは、自社開発した「TPS(トヨタ生産方式)カメラ」で作業者の動きを撮影し、各工程で要する時間を計測しながら作業改善につなげました。

その他にも、仕入先管理用のEDI(データ交換)システムの開発や、クラウドサービスの名刺管理ソフトや社内SNSなど、さまざまなデジタル技術を駆使して業務の効率化を進めています。

製造ラインの自動モニタリングシステムを自社開発した事例(旭鉄工株式会社)

自動車部品メーカーの旭鉄工は、製造ラインのデータモニタリングシステムを自社開発し、自社のラインで使用するだけでなく、他社へも同じサービスを販売しています。

監視する指標を生産個数、設備停止時間、サイクルタイムといった生産性の改善に必要な生産の基本項目に絞り込むことで、1ラインあたり月額約1万円という低予算で導入できることが強みです。

長期間使用している古い生産設備に最新のセンサーを導入するのはとても難しいですが、旭鉄工のシステムは汎用のセンサーを採用しており、古い設備でも簡単に設置できることが大きな特長です。

出典 : エネチェンジBiz 中小企業のIoTは自社でできる、旭鉄工の新会社が手がける支援策

取得したデータはクラウドにアップロードし、スマホやタブレットでタイムリーに閲覧できるので、問題が見つかったときに素早く対応できるメリットがあります。

システムの販売は、大規模なシステムの導入が難しい中小企業をターゲットとしていますが、システムを導入してもデータ解析に問題があることもよくあります。

そこで、旭鉄工では販売先が収集したデータを解析してレポートを作成したり、改善ノウハウを提供するコンサルティングを行ったりと、システムを導入した会社が改善につなげられるところまでフォローしています。

製造業のデジタル化にオススメなツール・サービス

世の中には製造業のデジタル化をサポートするさまざまなツールやサービスが存在しています。

ここでは、製造業の生産性向上や業務効率の改善にオススメなツールを厳選して紹介します。

営業力強化につながるマーケティングツールや顧客管理ツール

マーケティングや顧客管理業務をサポートするツールとして、以下のようなツールが知られています。

ツール名特徴料金
Adobe Marketo Engage行動のトラッキングにより適切な顧客や見込み客との関係を構築したり、自動化されたマーケティングキャンペーンを簡単に構築できる。3種類のプランがあり要見積もり
SATORI(サトリ)Webサイト内の行動履歴を把握し、名前が分かっている見込み顧客だけでなく、匿名の見込み顧客にもアプローチすることができる。・初期費用 300,00円
・月額 148,000円
Salesforce Account Engagementセールスフォース・ドットコム社が提供する、Salesforceと一体型のマーケティングオートメーションツール。顧客のWebアクセス分析、メールシナリオ設定、Salesforce連携などが可能。月額 15万円~
SanSan名刺をはじめとした顧客との接点に関する情報や企業情報など、
あらゆる顧客に関する情報を一元管理して全社で共有できる。
要見積もり
Bow Now(バウナウ)サイトに訪問したユーザーの企業名を自動で識別し、マーケティング活動に活用することができる。自動で見込み顧客を振り分け適切にアプローチすることができる。・フリープランは無料で使用可能
・有料プランは、月額 12,000円〜

新商品開発に有効なプロジェクト管理ツール

製品開発から市場への投入までの、一連のプロジェクト管理に有効なツールとして以下が挙げられます。

ツール名特徴料金
Wrike (ライク)プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握でき、タスクの割り当て、期限、進捗状況などを追跡することができる。柔軟なカスタマイズ機能を備えており、チームやプロジェクトに合わせて設定を変更可。月額 9.8$~ (無料版あり)
Trello (トレロ)シンプルで使いやすいインターフェイスが特徴で、個人から中小企業まで幅広く利用されている。複数人でのタスク管理やプロジェクト管理に最適であり、カスタマイズ性が高い。月額 5$~ (無料版あり)
Backlog (バックログ)プロジェクト管理、課題管理、バグ管理、バージョン管理などプロジェクトマネジメントに必要な要素を一通り管理することができる。Slack等との連携も豊富。月額 2970円~
My Redmine (マイ レッドマイン)課題やタスクを登録し、チーム全体でプロジェクトの進捗を把握。プロジェクト管理、課題管理、お問い合わせ管理などさまざまな用途で利用できる。月額 8000円~
Asana(アサナ)チームのプロジェクトやタスクを効率的に管理できる、豊富な機能を備えたプロジェクト管理ツール。全世界で7万社以上が導入し、プロジェクト管理ツールのスタンダードを確立しつつある。1ユーザーあたり月額 1,200円〜 (無料版あり)

製造過程で発生するデータなどを可視化・分析するツール

製造業において、製造工程で発生する様々なデータの分析はDXの主要な要素と言えるでしょう。製造ラインから収集したデータを分析し意思決定につなげる際、データ分析専用ツールを使うとExcelなどを使うよりも効率的に進められます。

データの分析には、以下のようなツールが使われています。

ツール名特徴料金
Tableau (タブロー)データの可視化、分析、共有を容易に行えるソフトウェアとして多数の導入実績を誇る。可視化のために多数のグラフやチャートを提供し、高度なデータ分析が可能。月額 15$~ (無料版あり)
Power BI (パワービーアイ)マイクロソフト社が提供するデータ分析ツール。比較的低価格であり、初めてBIツールを導入する小規模な組織にとっては魅力的な選択肢となる。月額 1,090円~ (無料版あり)
BIGDATA@Analysis 計解析や多変量解析といった専門知識を必要とせず、簡単な操作でビッグデータの可視化・分析ができるアプリケーション。月額 15万円~ (1ユーザ)
Pentaho (ペンタホ)データ統合、OLAPサービス、レポート、情報ダッシュボード、データマイニング、抽出、変換、読み込み機能を提供するビジネスインテリジェンスソフトウェア。月額 4,980円~(無料版あり)
Google Looker(グーグル ルッカー)Googleが提供するデータ分析ツール。データ分析に必要なスキルや知識を持たないビジネスユーザーでも扱いやすいよう、自己学習機能を搭載。基本的には無料
※1

※1 : Google Cloud Platformが提供するBigQueryへの接続や、分析用の有料テンプレートを購入する場合は料金が発生する。

現場業務の効率向上に最適な生産管理ツール

製造業での見積、受発注、生産管理、売上仕入、売掛買掛といった各種オペレーションは、デジタルを導入することによって大きく効率化することができます。

現場業務の効率化には、以下のようなツールの導入を検討してみるとよいでしょう。

ツール名特徴料金
WorkGear-X 中小製造業向け生産管理&業務総合システムとして、工場で必要な見積~受発注~生産管理~売上仕入~売掛買掛の全機能システムを搭載。280万円
Factory-ONE 電脳工場MF生産計画の立案から受注・出荷・手配計画(MRP手配/製番手配)・発注・受入・在庫・負荷・進捗・原価に至るものづくり情報を総合的に管理。要問合せ
TECHS-S (テックスエス)個別受注型の機械・装置業様向けに開発された、中小中堅企業のための生産管理システムで部品マスタの事前登録なしで運用やバーコードを用いて、仕入れや作業実績の入力が簡単にできる。要問合せ
TPiCS-X繰返頻度の高い生産から、少量多品種生産、一品受注設計生産まで1パッケージシステムで対応。要問合せ
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おわりに ~製造業をデジタルでもっと元気に~

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回は、製造業のデジタル化やDXについて解説いたしました。

製造業でDXを導入できれば、生産性向上や品質改善、コスト削減など多くの恩恵を受けられますが、実現のためには経営層と社員が一体となって取り組む組織体制の構築や、自社の課題やDXの目的に合わせた最適なツールの選定など、やるべきことが山のようにあります。

エスシードでは、製造業の会社様のDXも支援しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。