近年、飲食業界を直撃する「人手不足」や「原材料の高騰」などによって、飲食業界の全体的な変革や改革の必要性が高まってきています。
そうした課題を解決する手段の1つとして、飲食店の様々な業務を「デジタル化」して人手不足や業務効率化を実施していく動きが加速してきています。
今回は、そうした飲食業界・外食産業のデジタルトランスフォーメーションおよびデジタル化について解説していきたいと思います。
飲食DXとは何か?
飲食業界のデジタルトランスフォーメーションとは、デジタル技術を活用して飲食店の店舗の業務プロセスの効率化や顧客体験価値の向上、ビジネスモデルを改善・変革する取り組みのことを指します。
具体的には、オンライン予約システム、セルフオーダーシステム、キャッシュレス決済、顧客データ管理システム、デジタルマーケティング、在庫管理システムの導入などを通じて、業務効率化や生産性の向上などを目指していくことが含まれます。
政府も外食産業を積極的支援していく姿勢を見せており、農林水産省が「外食産業事業成長支援補助金」として飲食店の事業成長を最大1,000万円まで支援する(2023年度)といった支援も打ち出しています。
飲食業界の課題とは? ~深刻な人手不足や市場の変化~
IT導入やデジタルの活用が求められる日本の飲食・外食産業ですが、業界全体としていくつかの重要な課題があります。
以下にいくつかの主な課題を挙げてみます。
1. 人手不足
2. コロナ禍による打撃
3. デリバリーサービスの普及
4. 労働環境の改善
5. 環境問題への対応
課題① : 人手不足
日本の飲食業界では、人手不足が深刻な課題となっています。
少子高齢化による労働人口の減少や、若者の飲食業への関心低下が原因とされています。
また、労働条件の厳しさや低賃金も、人手不足の背景にあるとされています。飲食業界は外国人労働者の受け入れ拡大や、働き方改革が急務と言えるでしょう。
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)」によると、飲食店におけるパート・アルバイト等の非正規雇用のスタッフが人手不足である、と回答した企業は80%に達し、旅館・ホテル等の宿泊業と並んで、群を抜いた人手不足の現状が明らかになっています。
課題② : コロナ禍による打撃
新型コロナウィルスの感染拡大により、飲食業界は大きな打撃を受けました。
ウィルスの拡大期には、緊急事態宣言や営業時間の制限、外出自粛要請などにより、売上が大幅に減少しました。また、観光客の減少やイベントの中止も、業界に悪影響を与えました。
矢野経済研究所の「外食市場に関する調査(2022年)」によると、コロナウィルスの流行が落ち着きを見せ始めた2022年以降は、テイクアウトおよびデリバリー需要を取り込む洋風・和食のファストフードや、ファミリー層が低価格で気軽に利用できる回転寿司業態などの店内飲食も徐々に回復していくものとみられています。
課題③ : デリバリーサービスの普及
近年、デリバリーサービスの普及により、外食需要の一部がオンラインに移行しています。
特に、コロナ渦で定着した「テイクアウト・デリバリー」については、今後も市場が拡大していくことが予想されています。
ICT総研 の「2021年 フードデリバリーサービス利用動向調査」によれば、フードデリバリー市場は2023年に6,821億に達すると推計されており、過去5年間で約2倍の市場規模に成長しています。
「出前館」や「ウーバーイーツ(Uber Eats)」といったデリバリーサービスの利用客も増えてきていますが、「料理代金以外の費用がかかる」「到着時間が遅れる」といった不満や、「配達員とのトラブル」「問い合わせのしにくさ」「アプリなどの使い勝手」「決済手段」なども不満を感じる要因と指摘されており、フードデリバリーサービスは急拡大しているものの、課題は多いと言えるでしょう。
また、店舗側にとってもデリバリーには配送費や手数料がかかるため、価格競争力のある店舗に限られてしまうという課題があります。
課題④ : 労働環境の改善
飲食業界では、長時間労働やブラック企業が横行しているとされています。
このため、労働環境の改善が求められており、働きやすい環境の整備や、働き方改革の推進が必要とされています。
実際、厚生労働省の「令和3年上半期雇用動向調査結果の概況 」によれば、業種別の離職率では「宿泊業・飲食サービス業」が 15.6%と最も高くなっており、働き手がなかなか定着しないことが明らかになっています。
また、「平成28年度厚生労働省委託過労死等に関する実態把握のための 労働・社会面の調査研究事業報告書 」によると、外食・中食産業の「過重労働の防止に向けた取り組みへの課題」として、「人員不足のため対策を取ることができない」「売上や収益が悪化するおそれがある」という回答が多くなっており、「人手不足を解消するために労働環境を改善したいが、人手不足によって対策を立てることができない」という非常に厳しい悪循環に陥っていることが示唆されています。
課題⑤ : 環境問題への対応
飲食業界は、食材の調達や廃棄物の処理など、環境問題にも直面しています。
このため、サステナビリティの観点から、環境に配慮した取り組みが求められており、エコロジーな飲食店の認証制度などが導入されるようになっています。
実際、食品リサイクル法の基本方針においても「事業系食品ロスの削減に関して、2000年度比で2030年度までに半減させる」という方針が掲げられており、外食産業の環境保護への取り組みが強く求められるようになってきています。(参考 : 環境省 食品ロスポータルサイト)
以上のように、飲食・外食産業には「人手不足」「労働環境」といった「人」に関わる大きな課題や、デリバリーサービスの普及といった市場環境の変化、あるいは環境問題のような社会的な要因まで、様々な課題をクリアしていくことが求められていると言えます。
飲食業界をデジタル化するメリットは?
では、そうした様々な課題を「デジタル」で解決していくことを考えたときに、飲食・外食産業に「デジタル」を活用していくことのメリットとはなんでしょうか。
いくつかのメリットを上げて解説したいと思います。
- 業務効率化による人手不足の解消
- 経営効率の向上(売上向上とコスト削減の両立)
- スタッフの労働者環境の改善
- 顧客体験価値の向上
- 食品ロスの削減
メリット① : 業務効率化による人手不足の解消
デジタル化によって、注文や会計、在庫管理などの業務を効率化・自動化することができます。
例えば、タブレット端末やスマートフォンを活用したオーダーシステムや、AIを活用した在庫管理システムの導入などが想定されます。
また、ロボット技術を活用したキッチンアシスタントや配膳ロボットなども労働力の解消に役立ちます。
セルフオーダーに使えるシステム① : メニウくん
- 飲食店向けタッチパネルで導入NO.1
- 特許取得の商品画面で魅力が伝わりやすい
- 複数店舗の管理・多言語対応など柔軟な連動と豊富な機能
セルフオーダーに使えるシステム② : MAXNAVI neo
- 英語や中国語などに対応できるマルチリンガル機能を搭載。
- 単価アップを促進する「もう一品セールス」機能を搭載。
- お食事の経過時間に合わせたメニューを顧客へ知らせるプッシュ通知機能
メリット② : 経営効率の向上(売上向上とコスト削減の両立)
データ分析を活用して、顧客嗜好や需要予測を把握し、より効果的なメニューやマーケティング戦略を立案できます。
具体的には、POSシステムのデータを解析することで、人気メニューや売上の傾向を把握し、売れ筋のメニューを顧客におすすめしたり、季節によってメニューを変える場合などの参考になります。
また、客席・イートインスペースを設けずにフードデリバリーをメインに食事を提供する「クラウドキッチン」や「オンライン販売」などを活用することで、物件(店舗)の費用や人件費の削減が可能です。
メリット③ : スタッフの労働者環境の改善
デジタル化により、労働負担が軽減され、働きやすい環境が整います。
例えば、タイムカードの電子化やシフト管理アプリの導入により、労働時間の管理が容易になります。
あるいは、顧客自身でメニューを注文してもらうようなセルフオーダーシステムを導入すれば、メニューを覚えていない新人スタッフなどでもすぐに接客業務に入ることができ、注文間違えなども起こりづらくなります。
また、オンラインでの研修や教育ツールの導入によって、スキルアップが効率的に行えるようになります。
シフト管理に使えるシステム① : ジョブカン 勤怠管理
- クラウド勤怠管理システムとして15万社の導入実績
- 出勤管理、シフト管理、休暇・申請管理を一元化
- 必要な機能だけを選べる料金体系
シフト管理に使えるシステム② : SyncUP (シンクアップ)
- 組織管理と全店指標の一元管理ができる
- 希望・労務・予算に沿って簡単シフト作成
- いつでもどこでもアプリでシフト確認&追加
メリット④ : 顧客体験価値の向上
デジタルツールを使ったオーダーシステムや決済方法など、顧客にとって利便性の高いサービスを提供できるようになってきています。
例えば、QRコードを利用したスマートフォン決済や、タブレット端末でのオーダーなどが普及してきています。
また、SNSやLINEアプリなどを活用したプロモーションやポイントプログラムにより、顧客満足度やリピートを高めることができます。
キャッシュレス決済に使えるシステム⓵ : CASHIER PAYMENT
- CASHIER POSレジ/セルフレジ/タッチパネル券売機との連携が可能
- キャッシュレス環境を構築して販売機会を失わず、売上拡大に繋がる
- ポータブル型ならレジカウンターのみならず、テーブル決済やイベント・野外での利用も
キャッシュレス決済に使えるシステム② : STORES 決済
- 持ち運び可能でレジ横以外の座席・屋外決済・移動販売も可能
- 小規模店舗にも嬉しい最短1~2営業日以内に入金・分割支払い
- テイクアウトに対応した小規模店舗の移動販売にもおすすめ
メリット⑤ : 食品ロスの削減
デジタル化による「在庫管理」や「需要予測」の精度向上により、適切な発注量が把握でき、食品ロスを削減することができます。
具体的には、AIを活用した需要予測アルゴリズムや、IoT技術を使った冷蔵庫の在庫管理システムの導入などが想定されます。
また、食品ロス削減に特化したアプリやプラットフォームを活用し、余った食材や料理を販売・提供することも、食品ロスの削減に貢献します。
在庫管理に使えるシステム① : ポスタス
- 売上・顧客管理などの基本機能を網羅
- キャッシュレスやセルフ機能など最新のニーズに対応
- 複数店舗の管理・多言語対応など高機能も充実
在庫管理に使えるシステム① : Fooding journal (フーディングジャーナル)
- 店舗運営の管理業務に必要な機能を網羅
- 仕入れ管理、在庫管理、レシピ管理などにも対応
- シフト管理や給与計算も可能
飲食・外食のデジタル化を進めていく際のポイントは?
では、実際に飲食店に関わる業務をデジタル化していく際には、どのようなポイントを意識する必要があるのでしょうか。
意識したいポイントについて以下のような内容をご紹介いたします。
- デジタル化できる業務を見極める
- アナログな業務をできるだけデジタルにする(予約台帳・領収書・注文票など)
- お金の流れをできるだけキャッシュレスにする
- 顧客が不便を感じている部分を見つける(予約・注文・会計など)
- デジタル導入による費用対効果を見積もる
デジタル化できる業務を見極める
まずは、飲食店舗の中でデジタル化できる業務をリストアップし、効果的な業務改善を目指しましょう。
主なデジタル化できる業務には、予約受付、注文管理、在庫管理、顧客データ管理、キャッシュレス決済、マーケティングなどがあります。
デジタル化できる業務 | 具体例 | ツールの例 |
予約管理 | オンライン予約システムを導入し、顧客がスマートフォンやパソコンから予約できるようにすることで、効率的な予約管理が可能に | 食べログ, ホットペッパー |
注文管理 | タブレットやスマートフォンを用いたオーダーシステムを導入することで、注文の正確性やスピードが向上 | QRfood、メニウくん、MAXNAVI neo |
キャッシュレス決済 | クレジットカード、電子マネー、QRコード決済などのキャッシュレス決済を導入することで、顧客満足度向上や売上管理の効率化 | PayPay, LINE Pay, 楽天ペイ |
人材管理・シフト管理 | デジタル化されたシフト管理システムを導入することで、労働時間の把握やシフト調整が容易に | ジョブカン、SyncUp |
アナログな業務をできるだけデジタルにする(予約台帳・領収書・注文票など)
従来の紙ベースの業務をなるべくデジタル化することで、店舗運営を効率化することができます。
例えば、予約台帳はオンライン予約システムに切り替え、領収書は電子領収書に、注文票はタブレット端末やスマートフォンアプリでのオーダーシステムに変更することで、手間を減らし、情報の正確性を向上させます。
お金の流れをできるだけキャッシュレスにする
キャッシュレス決済の導入により、会計での混雑を緩和し、顧客満足度を向上させることができます。
また、キャッシュレス決済はレジ業務の効率化や売上管理の正確性向上にも役立ちます。
クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など、さまざまなキャッシュレス決済手段を導入することが望ましいです。
顧客が不便を感じている部分を見つける(予約・注文・会計など)
顧客が不便を感じている部分をデジタル化することで、顧客満足度を高めることができます。
例えば、混雑や店舗前での行列ができるような場合には、事前にスマートフォンアプリで予約ができるようにしたり、テーブル上のQRコードで注文できるシステムを導入したり、会計時にキャッシュレス決済ができるようにすることで、顧客に快適な飲食体験を提供できます。
デジタル導入による費用対効果を見積もる
デジタルツールを導入する場合は、導入に伴う投資コストと効果を見積もり、適切な導入計画を立てることが重要です。
具体的には、デジタルツールの導入費用、運用コスト、維持費用などを算出し、それに対して得られる効果(効率化による人件費削減、売上増加、顧客満足度向上など)を評価します。
ROI(投資対効果)を計算し、デジタル化が経済的に合理的であるかどうかを判断して進めることが望ましいです。
また、デジタル化を段階的に導入することで、費用対効果を確認しながら進めることができます。
例えば、最初は予約管理システムやオーダーシステムといった導入や運用が比較的簡単な部分からデジタル化をスタートさせ、効果を確認した上で在庫管理やマーケティング戦略のデジタル化に取り組むといった方法が考えられます。
デジタル化が進む中で、飲食業界も変革の波に乗り遅れないよう、柔軟に変化に対応し、効率的な経営を目指すことが重要です。
デジタル化を成功させることで競争力を高め、顧客により良いサービスを提供していきましょう。
おわりに ~飲食業界のデジタル化は急務~
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は「飲食・外食産業のデジタル化・DX」について、飲食業界が置かれている課題やデジタル化が必要となっている背景、デジタル化のメリットや検討したいポイントについて解説いたしました。
店舗のオペレーションなどをデジタル化するためのツールは、世の中にかなり出そろってきていますので、あとはそれをどのように活用するかという「活用力」が飲食業界に必要となってきています。
飲食業界や飲食店舗のデジタル化でお困りやお悩みの際はぜひお気軽にエスシードにご相談ください。