近年、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するために、「データ活用」に取り組む企業も増えてきています。

しかし、「DX」に対してどのようにデータを使えばよいのか分からず、悩んでしまうこともあるかと思います。

今回は、DXとデータ活用ってどういう関係性なの?」「DXを推進する場合にデータ活用ってどれくら重要なの?といった疑問にお答えしていきたいと思います。

いまDXに取り組むべき理由、DXに求められているデータ活用方法、データをDXに活用するためのポイントなどなど、「DXとデータ活用」に真剣に取り組む多くの経営者や担当者の方のお役に立てれば幸いです。

この記事でわかること

✔ DXとデータ活用の関係性がわかる
DX推進の際に求められるデータ活用の考え方がわかる
✔ DXに対してデータを活用する際の組織・人材・システムがわかる

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DXとデータ活用の関係性とは?

DXとデータ活用の関係性を理解するために、まずは、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」について、IT専門調査会社のIDC Japan株式会社の「DX定義」を確認してみましょう。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。

IDC Japan株式会社によるDX定義

DXにおけるポイントは以下の2点です。

● データ活用はDXにおける手段の1つであること
● データ活用などを利用して、風土やビジネスモデルを変革すること

つまり、データ活用を通じて、顧客に対し「新しいサービス通じた価値の提供」、従業員に対しては「働く上での満足度を提供」することで、「従来の風土やビジネスモデルを変えていく」ことがDXだと言えます。

顧客に対して「新しいサービスを通じた価値」を提供できれば、それが「顧客一人ひとりの心地よさ」になり、結果として競争優位性を確立できるようになります。

顧客に寄り添った価値を提供するには、商品やサービスに関する「口コミ」や「SNS」などをはじめとする生の声と、基幹システムに蓄積された「顧客属性」や「購買傾向」などのデータが必要となります。

これを元に顧客が満足するサービス開発・提供に向けて仮説検証を行い、結果として顧客満足度が向上し、DXのポイントである「風土やビジネスモデルを変革すること」に繋がります。

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いまDXに取り組むべき3つの理由

いまDXに取り組むべき大きな理由としては、「競争優位性の確保」「人材不足への対応」制度改正に伴うリスク」といった理由が挙げられます。

特に中小企業の場合、「2022年版 中小企業白書・小規模企業白書」(経済産業省2022年4月発表)によると、約40%ほどの企業は、デジタルツールを電子メールや会計業務の電子処理業務にしか活用できていないと報告されています。

世の中の「デジタルシフト」が進んできている今だからこそ、中小企業を始めとする企業は今後の事業拡大のためDXに取り組む必要があるでしょう。

1.サービスの価値向上により競争優位性を確立する

早い段階でDXへの取り組みを行い、顧客が満足するサービスや商品は何かを突き詰め、よりサービスの価値を向上させましょう。

DXへの取り組みをしない場合、気がついたら競合の方が優位性を持っていることや、全く意識していなかった新規参入企業に市場や顧客を横取りされてしまう可能性もあります。

昨今は、どの市場にどんなプレイヤーがいつ参入してきてもおかしくない状況です。

いまは過去の実績から優位性があるかもしれませんが、新技術の台頭により優位性が逆転することも考えられます。

特に中小企業の場合は、大企業より意思決定が早い傾向があるので、そのメリットを活かしてより短期間で仮説検証のサイクルを回すことが差別化のポイントとなります。

2.人手不足の場合は業務最適化と離職率防止策を検討する

慢性的な人手不足がある場合、業務内容の最適化従業員の離職率を減らす必要があります。

顧客に対する必要以上のサービスの提供は仕入れコストやオペレーションコストの増加に繋がります。

また、社内でそれほど重要でない業務に多くの時間を割いていたり、多くのスタッフを充てている場合も少なくないと思います。

特に中小企業は慢性的な人材不足傾向にあるため、業務の最適化を行うことで企業としての本質的な価値を生み出す部分にマンパワーを集中させていく必要があります。必要性の低い業務は思い切って止める、いままでなんとなく続いてきた習慣を根本的に見直す、といったことも大切です。

また、従業員の満足度を向上させて、離職を防ぐ必要もあります。属人化している業務において急な離職があった場合、その影響は大きいでしょう。

DXはサービスの開発やシステム面だけでなく、従業員の生産性や定着率が向上するような視点から取り組むことも重要です。

3.デジタル化が推奨される制度改正に伴うリスクに備える

ペーパーレス化・デジタル化を行わない場合、デジタル化を推奨するような制度改正によるリスクが発生する可能性があります。

例えば、2023年10月に導入が予定されている「インボイス制度」において考えてみましょう。

「インボイス制度」とは、消費税の仕入税額控除の方式のことで、適格請求書などの保存や確認作業が発生します。

デジタル対応を行わない場合、適格請求書原本の紛失や帳簿との付き合わせ作業などに生じる人為的なミスが考えられ、消費税の控除が受けられないなどのリスクがあります。

近年続く「物価高」や、「社会保障費の増税」といった影響は、企業活動においても大きな影響を及ぼしています。

企業活動の「コスト」は自分たちの意思の届かないところでどんどん上がっていく一方で、売上を伸ばすためには相当な努力や時には運も必要です。せめて、自社でコントロールできる部分の「コスト」だけは最小化したいところです。

将来、「インボイス制度」以外にもデジタル化が求められる制度改正の可能性もあるため、今の段階から少しずつデジタル化を行い、スムーズに導入できる体制や基盤づくりがポイントとなるでしょう。

DXにはどんなデータ活用が求められているのか?

DXにおけるデータ活用に求められているのは、データを主導とした意思決定を行うことです。これをデータドリブン経営と言います。

具体的には、DXを支えるIoT・AIといった技術を活用し、ビジネスのあらゆる場面においてデータ主導で意思決定をする経営のことを指します。

では、なぜデータドリブンな意思決定が求められているのでしょうか。

従来は、以下のフローのような経営層や実績を出している人の経験や勘を重視し、誰が発言したかで物事が決まるやり方が主流でした。

課題発見 > 上位報告 > 意思決定 > 下位に指示 > 実行

しかし、そのやり方でデータ活用を行う場合は以下のようなフローを踏む必要があり、経営層の意思決定から現場でのオペレーションまでのタイムラグが大きくなるため、顧客ニーズやビジネス環境の変化についていくことが難しくなります。(組織が大きく、階層が複雑であるほど困難になります。)

課題発見 > データ集計 > データ分析 > 上位報告 > 意思決定 > 下位に指示 > 実行

得られたデータから課題を発見し、それを施策に落とし込んで実行していくこと自体は非常に重要ではありますが、経営層に報告される提案等の根拠となるデータが半年前や1年前のデータでは、市場の変化が早い現代のビジネスにおいては意思決定の役に立ちません。

したがって、「なるべく鮮度のよい食材をスピーディーに調理して提供する」といったような考え方がデータ活用に必要になってきます。

また、経営層の側としても、下からの報告や提案を待っているのではなく、「必要なデータは自分で確認する・取りに行く」という能動的な姿勢と、そのための仕組み作りが必要です。(これが苦手な方が多い印象です)

つまり、データドリブン経営の場合、誰もが自分自身で「課題発見 > データ取得 > 集計 > 分析 > 行動 > 検証」というサイクルを短期間で実行することが求められます。

サイクルが自然と習慣化されるので、顧客ニーズやビジネス環境の変化に合わせて対応できるようになります。

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データをDXに活用していくためのポイント【組織・人材・システム】

データをDXに活用していくためのポイントとして、データドリブン経営に必要な組織」「人材」「システムの3つの点に対して取り組みが重要です。

組織:経営層などのトップの意識変容が重要

上記でも少し述べましたが、組織のトップである経営層や管理職から意識を変えていくことが重要です。

経営層や管理職の意識が変わることが、データドリブン経営やDXの大きな推進力となります。
それにより、データの基盤構築・データ集計・分析ツールの社内展開・従業員へのデータドリブン教育研修などの実施が可能になり、DXを行うための基盤が構築できます。

実際、成果を上げてきている企業においては、企業のトップがDXやデータ活用に対して明確なビジョンを発信している例が増えてきています。

逆に言えば、「経営層の意識が変わらない・理解が得られない」といった企業では、業務のある一部を「デジタルシフト」するくらいはできるかもしれませんが、本質的な意味での「デジタルトランスフォーメーション」は難しくなります。

デジタルシフトとは?

これまでの業務をデジタルに置き換えること。例えば、これまで紙で取り交わしていた契約書を、電子契約書にする、といったこと。

人材:各従業員の意識や行動の変化が必要

もちろん、経営層や管理職の意識を変えるだけでなく、従業員の意識や行動も変えていくことが必要です。

上記で述べたように、データドリブン経営で大事なことはそれぞれの従業員が問題・課題を定義して、それに対してデータを用いた仮説検証を行い意思決定をするということです。

今までも決められたフォーマットに沿ったデータ集計や、そのときの必要に応じてデータを参照し上司に報告するといったことは、多くの企業で行ってきていると思います。
しかし、今後はあらかじめ決められた定型的なデータ集計業務だけではなく、各従業員が自分自身で目的意識を持ってデータ収集・集計・分析を行い自律的に行動することが求められてきます。

データ集計・分析のスキルやテクニック取得のためのハードルは、かなり下がってきていると思います。オンラインスクールや質の高い教材などが増えてきているためです。

そうした中で最も難しいのは「意識を変える」ということです。

人の意識は簡単に変えることができないものでもあります。もちろん、既存の従業員の意識を変えていく働きかけは重要ですが、「自社のパーパス(社会に対する存在意義)やビジョンに共感してくれる人を集める」というアプローチも今後の企業経営においては非常に重要になってくると思います。

パーパス経営とは?

近年注目されている企業経営のあり方。「ビジョン」のような「自社が何を目指すか」という視点ではなく、「社会に対してどのような貢献をするのか」という第三者的な観点をもとに、様々なステークホルダーとの共感を作り上げていく経営の考え方のこと。

システム:分散しているデータの一元管理が重要

データドリブン経営を行うにあたり、各部署に分散されたデータを1つの場所に集約させることが重要です。

DXの第一歩はデータの基盤を整備するところから始まる」と主張する人もいるくらい、重要な取り組みになります。

データに基づいて意思決定をする場合、同じデータを参照して仮説検証を行い、必要に応じてデータの整理や情報追加を行い、組織として保有している情報を育てる必要があります。

データも食材と同様で、適切な育て方や管理をしなければ「鮮度が落ちる」「形がいびつになる」「腐る」といったことが起こります。(もちろんデータが実際に「腐る」訳ではありませんが、役に立たないデータをコストをかけて持ち続けてもマイナスにしかなりません)

こうした取り組みは、いわゆる「データマネジメント」と呼ばれるものです。

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「データマネジメント」とはそもそも何か? 進めていく上でのポイントは何か? について分かりやすく解説しています

データを適切に収集・管理することで、口コミやSNSなどのリアルタイムデータや、基幹システムに蓄積された顧客属性などのデータ分析が行えるようになり、顧客に満足してもらえるサービスの提供に繋がります。
また、ガバナンス・コンプライアンスといった企業経営のリスクの視点や、サイバーセキュリティといった観点からも非常に重要です。

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おわりに ~データ活用を通じてDXに取り組んで行くために~

最後までお読み頂きありがとうございます。

データ活用はDXを推進していく上でひとつの手段であり、顧客に対して満足度が高いサービスを提供できるだけでなく、それを通じて従業員の満足度も上げることに繋がります。

実現するには、データドリブンな意思決定が重要で、「組織」「人材」「システム」3つ全ての取り組みを行わなければ実現できません。ただし、非常に難しいタフな取り組みになることは間違いありません。

最終的には、「理屈」ではなく「気持ち」の部分での勝負になってくることもあると思います。

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