「単純な事務処理に多くの時間がかかっている」「やたらと時間がかかるPC作業をもっと効率化できないか」と悩んでる中小企業の経営者や担当者の方は多いと思います。

今回はそうしたお悩みを解決できる可能性がとても高い「RPA」というデジタルツールをご紹介いたします。

「RPA」を使うと、受発注処理やデータ処理などを「自動化」でき、年間で何万時間分もの作業を削減した例も出てきています。

中小企業にとっても低コストで導入しやすい「RPA」を使って、会社の業務をどんどん自動化していきましょう。

デジタル化やデータ利活用のお悩みをLINEで無料相談

RPAとは何か?

RPAとは、「Robotic Process Automation」の略称で、ソフトウェアロボットを使用してビジネスプロセスを自動化する技術です。RPAは、ルーチン業務や定型業務を自動化し、人間の手作業や作業時間を削減することができます。

RPAは、人間が行っているルーチン業務、データ入力、データ処理、書類作成、請求書の作成や送信、在庫管理、顧客情報の更新など、様々な業務に適用することができます。これにより、企業は生産性を向上させ、人的ミスを減らし、顧客サービスを改善し、コストを削減することができます。

ただし、あくまでRPAは「パソコン上」で動くアプリケーションのため、パソコンを介さないような作業を自動化することはできません。(例えば、「手紙を封筒に入れる」といった作業など)

RPAは、人間と同じようにタスクを実行でき、運用コストが低く、効率的なソリューションとして企業のデジタル化に貢献しています。

RPAはどういう業務に適しているのか?

RPAの導入で成果が出やすい業務としては、「定期的に発生する」「反復性のある(ルールが決まっている)」「業務の量が多い」といった業務が当てはまります。

例えば、以下のような業務にRPAの適用がしやすいです。

● 受発注業務 : 受発注データの自動取り込みと基幹システムへの自動入力
● 在庫管理業務 : 日々の在庫データの確認と、不足時の自動通知や自動発注
● 請求管理 : 売上データを利用して、月末の請求書の自動作成、自動送信
● 営業活動 : 問い合わせへの自動返信、営業管理ツールへの記録・営業へのアラート等
● マーケティング : Webデータの収集と、分析レポートの自動作成、異常発生時のアラート等

RPAによって劇的な業務効率化を遂げた事例は?

RPAは、大企業から中小企業まで、様々な規模や業界の企業の業務効率化に大きな成果を上げるようになってきています。

以下に、RPAによって成果を上げている企業の事例をいくつかご紹介いたします。

住友商事 ~年間で10万時間以上もの業務時間を削減~

住友商事は2020年1月時点で85の部署がRPAを導入しており、RPAのソフトウエアロボットの数は360に上るといいます。

RPAによって削減したPC作業の業務時間は住友商事単体で年間1万6000時間(2019年8月時点)、グループ全体でみると年間10万時間以上(同)に達するそうです。

これまで営業部門の与信管理業務や経費精算の一覧表のダウンロードと確認作業など、人手で行っていた業務をRPAで自動化し、各部署で共通して存在する業務が効率化されたことで大きな成果を上げています。

参考 : 日経クロステック 「RPAの「よろず屋」を社内に作った住友商事、年1.6万時間を削減した技

NEC ~年間120,000件の取引作業をRPAで自動化~

NECでは、年間 約120,000件の受注手続きに対して約140,000時間もの時間を要していた作業にRPAを導入。

RPA導入によって生み出した削減効果はグループ全体で年間約250,000時間と発表されています。

また、作業時間削減に加え、各担当者が、他の業務もある中で受注データを正確にエントリーしなければならないという心理的なプレッシャーからの解放や、ルールに基づく入力やチェックにより精査時の否認件数が削減されたこと、ロボットによる自動化で作業の漏れが減ったことも、数字に表れないRPAならではの大きな成果だと言われています。

参考 : NECソリューションイノベータ

株式会社マツヤ ~受注処理業務を年間3000時間削減~

大阪を拠点に全国に拠点を持つ食品卸会社マツヤは、受発注システムとRPAを組み合わせることで、年間約3,000時間の業務時間を削減。

基幹システムをリニューアルした際、取引データをCSVにして取り込むことで社内のIT化を進め、自社のFAX受注業務による従業員の負担を減らすことを目的としました。

取引先に受発注システムを利用して発注してもらうことが必要だったため、取引先に対して紙の案内状を送り、営業担当者が直接出向いて説明。RPAによる受注自動化で出荷作業がスムーズになったと言います。

参考 : フーズチャンネル : RPAで受注処理業務を自動化。年間約3,000時間削減した食品卸のIT活用術~株式会社マツヤ

このようにRPAは受発注業務や管理業務の自動化・効率化にとても大きな効果を発揮し、効率的な業務の実施には欠かせないツールとなっていることがご理解いただけるかと思います。

RPAを導入するためのポイントは?

では、RPAを自社に導入しようとする際には、どんなことがポイントになるのでしょうか。

以下のようなポイントを押さえて、導入の検討を進めていくことが重要です。

1. 業務プロセスの詳細な分析
2. ROI(投資収益率)の算出
3. データセキュリティの確保
4. バックアップとリカバリーの計画
5. 社内コミュニケーション

RPAを導入する前に、どの業務プロセスを自動化するかを決定する必要があります。そのため、各業務プロセスを詳細に分析する必要があります。業務をよく観察することや、業務に携わっている従業員からヒアリングすることなどが重要です。

また、導入にかかる費用と見込まれる利益を比較し、ROIを算出することも必要です。やる気になってRPAを導入したものの、いまひとつコスト削減効果が見えず、RPAが社内に浸透しなかったという例もあります。

RPAの利用コストは、ツールによって異なりますが、比較的安価なクラウド型であれば、1ライセンス月額数万円〜で利用することができます。よって、まずは1ライセンスからスタートして少しずつライセンス数を増やしていくことをおすすめします。

RPAで成果を出せる企業と出せない企業の違いは?

ここまで、RPAの導入効果は非常に大きいものであることや、導入のためのポイントなどをご理解いただけたかと思いますが、「RPAは導入さえすれば成果が出る」という魔法のツールではありません

RPAを導入することで成果が出やすい企業と、成果があまり出ない企業があることが分かっています。

主に、以下のような点が挙げられます。

  1. RPAを導入しやすい業務プロセスが存在しているかどうか
  2. 業務プロセスがどの程度「標準化」されているのかどうか
  3. データの品質
  4. 社内のITインフラの状況

1. RPAを導入しやすい業務プロセスが存在しているかどうか

RPAは、ルーチンで繰り返し行われるタスクを自動化するための技術です。

RPAで成果を出せる企業は、受発注業務などのルーチンタスクが多く、人間によるエラーが起こりやすい業務を行っている場合があります。

一方、RPAで成果を出せない企業は、複雑なプロセスや、個々のタスクの種類が多岐にわたる業務を行っている場合があります。

個人のスキルやアイデアにかなり依存するような業務や、顧客によって商品や成果物などを1つ1つ変えなければいけないオーダーメイド型のビジネスの場合などは、RPAの導入に向いていません。

2. 業務プロセスがどの程度「標準化」されているのかどうか

RPAを導入する際には、業務プロセスが標準化されていることが望ましいです。

つまり、業務を実施するのにあたって「マニュアル化」できるような業務のやり方をしているのかどうか、ということです。担当者が変わったりしても、同じやり方で同じような成果を出せるような業務はRPAの導入に向いています

RPAで成果を出せる企業は、既に標準化されたプロセスを持っている場合が多いです。

一方、RPAで成果を出せない企業は、業務プロセスが複雑で、標準化されていない場合があります。

パソコンを使った単純作業ではあるものの、人によってやり方がバラバラであったり、統一したルールなどがない場合は、RPAの導入を行う前に、まずは業務そのものを「標準化」することが必要になります。

3. データの品質

RPAは、パソコンの中で動くアプリケーションのため、つまり「データ」を処理するための技術、ということになります。

したがって、RPAで成果を出すためには、正確で信頼性の高いデータを持っていることがポイントになります。

受発注業務などで、毎回同じような形式で同じようなデータが集まってくるような場合はRPAの導入が成功しやすいでしょう。

一方、データに抜け漏れが多かったり、データの形が統一されていないような場合は、RPAで作業を自動化するのが難しく、人の手を借りなければいけない場合が多くなります。

4. 社内のITインフラの状況

RPAを導入するためには、社内に十分なIT環境が必要です。

RPAで成果を出せる企業は、十分なITリソースを持っており、IT部門がRPAの選定や実装に携わっている場合があります。

一方、RPAで成果を出せない企業は、ITインフラが不十分であり、ITを専門的に扱える人材がいない場合などは、RPAの実装が難しい場合があります。

もちろん、RPAを開発・販売しているベンダー等が導入の支援などは実施してくれますが、どのような業務をどのように自動化する必要があるのか、といったことは自社で検討しなければいけませんし、RPAをうまく動かすためにはトライアンドエラーを重ねていく必要があるため、ITに強い企業のほうが成功しやすいことは間違いありません。

どんなRPAツールを選ぶべきか?

では、実際にRPAを導入する際にはどのような選択肢があるのかについて、いくつかのRPAを紹介していきます。

RPAのタイプと選び方

RPAには、会社の規模や自動化したい業務の数や複雑さ、といったことに応じて、以下のように3つのタイプがあります。

  1. 手軽に導入できるタイプ (主に小規模事業者向け)
  2. 開発・運用のサポートに強みのあるタイプ (社内の複数部署で活用したい場合など)
  3. 基幹システムと連動できるタイプ (複雑な条件でも対応できる)

今回は、小規模事業者向けに手軽に導入・利用できるRPAツールをご紹介します。

手軽に導入できるタイプ (主に小規模事業者向け)

自動化したい業務が明確で、全社的な利用や大規模利用などは考えていない場合に有効です。この場合は、導入ハードルが低く、使い勝手の良いツールがおすすめです。

例えば、以下のようなツールがあります。

ツール名提供企業特徴料金
WinActorNTTアドバンステクノロジ株式会社受発注情報の基幹システムへの登録や、複数システム間の情報連携、ソフト開発での検証作業等での利用実績。要問い合わせ
RoboTANGOスターティアレイズ株式会社業務操作を録画するだけでロボットが作成できる「録画機能」を搭載。月額50,000円~
JobAuto株式会社シジャム・ビーティービー仮想環境でもオプション料金なしで動かせることに加え、無料の操作講習も実施。月額80,000円~
AUTOROオートロ株式会社簡単な設定で同時稼働台数を増やすことができ、設定用・実行用ライセンスを別々に購入する必要がない要問い合わせ
アシロボディヴォートソリューション株式会社業界最安値クラス月額50,000円で2ライセンス(PC2台分)利用可能。月額50,000円〜
マクロマンコクー株式会社データ入力、照合、メールの送受信などを完全無料で利用できる無料
Biztex cobitBizteX株式会社インストール不要で申し込みから最短即日で利用できる要問い合わせ

中小企業がRPAの導入を検討する時には、こうしたツールを比較検討してみるとよいでしょう。

使い勝手があまり良くない場合や、自社の業務にマッチしない場合にはすぐに解約することもできるので、いくつか試しながら自社に合うRPAを導入・運用していくとよいでしょう。

デジタル化やデータ利活用のお悩みをLINEで無料相談

おわりに ~単純作業はロボットに任せる時代に~

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回は「RPA」というツールを使って、中小企業の単純作業や事務処理などを劇的に効率化する方法をお伝えいたしました。

「単純作業」や「ルーチンワーク」といった業務は、従業員のモチベーションが上がらないだけではなく、ミスが起きやすい業務でもあり、またそのミスが割と大きな影響を与える場合もあります。

そうした作業をなるべく「機械」に任せることで、モチベーションの上がらない業務から従業員を開放し、なおかつミスを最小限に抑えていくことが可能になってきています。

業務の効率化、自動化、デジタル化にお困りの際は、ぜひお気軽にエスシードにご相談ください。